5.07(a)〈8.01〉正規の投球姿勢

投球姿勢にはワインドアップポジションと、セットポジションとの二つの正規のものがあり、どちらでも随時用いることができる。
投手は、投手板に触れて捕手からのサインを受けなければならない。

【原注】投手がサインを見終わってから、投手板を外すことはさしつかえないが、外した後にすばやく投手板に踏み出して投球することは許されない。このような投球は、審判員によってクィックピッチと判断される。投手は、投手板を外したら、必ず両手を身体の両側に下ろさなければならない。
投手が、サインを見終わるたびに投手板を外すことは許されない。
投手は投球に際して本塁の方向に2度目のステップを踏むことは許されない。塁に走者がいるときには、6.02(a)によりボークが宣告され、走者がいないときには、6.02(b)により反則投球となる。

(1) ワインドアップポジション

投手は、打者に面して立ち、その軸足は投手板に触れて置き、他の足の置き場所には制限がない。
この姿勢から、投手は、

① 打者への投球に関連する動作を起こしたならば、中途で止めたり、変更したりしないで、その投球を完了しなければならない。
② 実際に投球するときを除いて、どちらの足も地面から上げてはならない。ただし、実際に投球するときは、自由な足(軸足でない足)を1歩後方に引き、さらに1歩前方に踏み出すこともできる。

投手が軸足を投手板に触れて置き(他の足はフリー)、ボールを両手で身体の前方に保持すれば、ワインドアップポジションをとったものとみなされる。

【原注1】ワインドアップポジションにおいては、投手は軸足でない足(自由な足)を投手板の上か、前方か、後方かまたは側方に置くことが許される。

【原注2】(1)項の姿勢から、投手は、
① 打者に投球してもよい。
② 走者をアウトにしょうとして塁に踏み出して送球してもよい。
③ 投手板を外してもよい(ボールを両手で保持した投手は、投手板を外したら必ず両手を身体の両側に下ろさなければならない)。投手板を外すときには、最初に軸足から外さなければならない。
また前記の姿勢から、セットポジションに移ったり、ストレッチをすることは許されない。— 違反すればボークとなる。

【注1】アマチュア野球では、投手の軸足および自由な足に関し、次のとおりとする。
① 投手は、打者に面して立ち、その軸足は投手板に触れて置き、他の足の置き場所には制限がない。ただし、他の足を投手板から離して置くときは、足全体を投手板の前縁の延長線より前に置くことはできない。
② 投手が①のように足を置いてボールを両手で身体の前方に保持すれば、ワインドアップポジションをとったものとみなされる。

【注2】投手が投球に関連する動作をして、身体の前方で両手を合わせたら、打者に投球すること以外は許されない。したがって、走者をアウトにしょうとして塁に踏み出して送球することも、投手板を外すこともできない。違反すればボークとなる。

(2) セットポジション

投手は、打者に面して立ち、軸足を投手板に触れ、他の足を投手板の前方に置き、ボールを両手で身体の前方に保持して、完全に動作を静止したとき、セットポジションをとったとみなされる。

この姿勢から、投手は、
① 打者に投球しても、塁に送球しても、軸足を投手板の後方(後方に限る)に外してもよい。
② 打者への投球に関連する動作を起こしたならば、中途で止めたり、変更したりしないで、その投球を完了しなければならない。

セットポジションをとるに際して〝ストレッチ〟として知られている準備動作(ストレッチとは、腕を頭上または身体の前方に伸ばす行為をいう)を行なうことができる。しかし、ひとたびストレッチを行なったならば、打者に投球する前に、必ずセットポジションをとらなければならない。

投手は、セットポジションをとるに先立って、片方の手を下に下ろして身体の横につけていなければならない。この姿勢から、中断することなく、一連の動作でセットポジションをとらなければならない。

投手は、ストレッチに続いて投球する前には(a)ボールを両手で身体の前方に保持し、(b)完全に静止しなければならない。審判員は、これを厳重に監視しなければならない。投手は、しばしば走者を塁に釘づけにしようと規則破りを企てる。投手が〝完全な静止〟を怠った場合には、審判員は、ただちにボークを宣告しなければならない。

【原注】走者が塁にいない場合、セットポジションをとった投手は、必ずしも完全静止をする必要はない。
しかしながら、投手が打者のすきをついて意図的に投球したと審判員が判断すれば、クィックピッチとみなされ、ボールが宣告される。6.02(a)(5)[原注]参照。

塁に走者がいるときに、投手が投手板に軸足を並行に触れ、なおかつ自由な足を投手板の前方に置いた場合には、この投手はセットポジションで投球するものとみなされる。

【注1】アマチュア野球では、本項〔原注〕の前段は適用しない。
【注2】(1)(2)項でいう〝中途で止めたり、変更したり〟とはワインドアップポジションおよびセットポジションにおいて、投手が投球動作中に、故意に一時停止したり、投球動作をスムーズに行なわずに、ことさらに段階をつけるモーションをしたり、手足をぶらぶらさせて投球することである。【注3】投手がセットポジションをとるにあたっては、投手板を踏んだ後投球するまでに、必ずボールを両手で保持したことを明らかにしなければならない。その保持に際しては、身体の前面ならどこで保持してもよいが、いったん両手でボールを保持して止めたならば、その保持した個所を移動させてはならず、完全に身体の動作を停止して、首以外はどこも動かしてはならない。
【注4】セットポジションからの投球に際して、自由な足は、

① 投手板の真横に踏み出さない限り、前方ならどの方向に踏み出しても自由である。
② ワインドアップポジションの場合のように、1歩後方に引き、そして更に1歩踏み出すことは許されない。

【注5】投手は走者が塁にいるとき、セットポジションをとってからでも、プレイの目的のためなら、自由に投手板を外すことができる。この場合、軸足は必ず投手板の後方に外さなければならず、側方または前方に外すことは許されない。投手が投手板を外せば、打者への投球はできないが、走者のいる塁には、ステップをせずにスナップだけで送球することも、また送球のまねをすることも許される。
【注6】ワインドアップポジションとセットポジションとの区別なく、軸足を投手板に触れてボールを両手で保持した投手が、投手板から軸足を外すにあたっては、必ずボールを両手で保持したまま外さねばならない。また、軸足を投手板から外した後には、必ず両手を離して身体の両側に下ろし、あらためて軸足を投手板に触れなければならない。

【問】投手がストレッチを行なってから、セットポジションをとるまでに、両手を顔の前で接触させ、そのまま下ろし、胸の前でボールを保持した。ボークになるか。
【答】たとえ顔の前で両手を接触させても、そのままの連続したモーションで、胸の前に下ろして静止すれば、ボークにはならない。しかし、いったん顔の前で停止すれば、そこでボールを保持したことになるから、その姿勢から両手を下に下ろせばボークとなる。

投手は、投手板の上に立って、あるいは投手板に触れて捕手からのサインを見なければならない。投手が、投手板をまたいだり、投手板の後方に立ってサインを受け取ってはならない。

投手がサインを見終わってから投手板をはずすことは差し支えないが、はずした後に素早く投手板を踏んで投球することはできない。このような投球は、審判員によって、クイックリターンピッチと判断される。クイックリターンピッチは、イリーガルピッチとなり、また危険なので許してはならない。

投手は、投手板をはずしたら必ず両手を身体の両側に下さなければならない。投手がサインを見終わるたびに投手板をはずすことは許されない。

<第3版解説 サインの見方>

投手は、投手板の上に立って、あるいは投手板に触れて捕手からのサインを見なければならない。投手が、投手板をまたいだり、投手板の後方に立ってサインを受け取ってはならない。(5.07(a))

投手がサインを見終わってから投手板をはずすことは差し支えないが、はずした後に素早く投手板を踏んで投球することはできない。このような投球は、審判員によって、クイックリターンピッチと判断される。クイックリターンピッチは、イリーガルピッチとなり、また危険なので許してはならない。

投手は、投手板をはずしたら必ず両手を身体の両側に下さなければならない。投手がサインを見終わるたびに投手板をはずすことは許されない。(5.07(a)[原注])

3版解説 二段モーション より>

投手が、投球の途中で自由な足を止めたり、ことさら段階をつけたり、ぶらぶらさせたりすることは、投球の中断・変更に当たることから認められない。

自由な足と同様、投手がワインドアップポジションから振りかぶった両手を頭の上で長く止めたり、あるいはノーワインドアップで投球動作を起こしてから自由な足を後ろに引いたまま暫く体の動きを止めたままにすることも、投球の中断・変更に当たるので認められない。(5.07(a)(2)[注2])

2017年のシーズンまでは、上記のような規定となっていて、審判員は走者がいないときはボールを、走者がいるときはボークを宣告していた。しかし、2018年の規則改正で、定義38(反則投球)の[注]が削除された。  

[注]投手が5.07(a)(1)および(2)に規定された投球動作に違反して投球した場合も、反則投球となる。 

この改正は、我が国の投手の投球動作に関するものだけでなく、野球のマナーに関する大きな、そして重要なものである。

まずは、アマチュア野球規則委員会の通達(2018年2月)の全文を掲載したい。

 今年度の改正では、国際基準に合わせて、定義38の[注]が削除されることになりました。これにより、いわゆる“二段モーション”といわれる投球動作に対しては、走者がいないときにはペナルティを課すことがなくなります。つまり、走者がいない場合に違反しても、これまでのように“ボール”を宣告することはなくなります。

MLBやWBSCの国際大会において、“二段モーション”が反則投球とされないのは、定義 38の[注]が英文の規則書にはないのが、一つの大きな理由でした。さらに、外国では“二段モーション”のような動作が、威力のある強い投球をするためには理にかなっていないと考えられていることも理由の一つです。この点については、投手の投球動作について、科学的視点からの理論付けを日本野球科学研究会の専門家にお願いすることにしています。

我が国での“二段モーション”の始まりは、何とかして打者のタイミングを外そう、打者を幻惑しようとする投球動作がルーツです。マナー面の問題としても許されない動作を規制するため当時の規則委員会では日本独自の[注]を設けて対応してきましたが、現在では打者にとっての不利益を与えるような問題はなくなってきているものの、ナチュラルな投球動作とは言えない“二段モーション”と言われる動作が根絶されていないことは事実です。 

今回の改正で、走者がいない場合はペナルティを課すことはなくなり、これまでしばしば問題となっていた、反則投球とする基準が不明確、大会によって適用がまちまち等の混乱はなくなるはずです。 

しかし、技術的な面においても、マナーの面においても“二段モーション”は望ましい投球フォームではないという考え方に変更はなく、我々はあくまでも正規の(ナチュラルな)投球動作の確立を目指すことは変わりありません。 

コリジョンルールの採用によって、捕手の“ブロック”というプレイがなくなったことにより“ブロック”という言葉も使われなくなってきました。同じように、我が国の野球界から“二段モーション”という言葉が忘れ去られる日を目指したいと思います。 

今回の改正は、反則投球の取り扱いについて大きな改正ですが、指導者、選手、審判員には改正の趣旨を正しく理解していただけるよう周知・徹底をお願いいたします。

 この規則改正の経緯について整理しておきたい。

・1971(S46)年、定義38の[注]が追加された。これは、当時の王選手の一本足打法に対して、何とかタイミングを外すため背面投法をする投手も現れるなどしたため、打者のタイミングを外したり、打者を幻惑したりする投球動作を禁止するために規定された。

・1995(H7)年頃から、プロ野球で自由な足を上下させてから投球する投手が出始めた。 

・1996(H8)年のプロ・アマ合同野球規則委員会において、自由な足を上下させたり、ぶらぶら振るのは”natural”な投球動作ではないから許されないことが確認され、プロ・アマを問わず正しい野球に向けて取り組んでいくこととした。   

参考:1996公認野球規則の「はしがき」(抜粋)       

今年は、・・・野球が正式種目になって二度目のオリンピックがアトランタで開催される。全世界に通用する一本化された野球規則を目標に審議を重ねた。規則8.01(a)の①(現 5.07(a)(1)①)、同 (b)の②(現 5.07(a)(2)②)を太字にして注意を喚起するのも、いま見過ごされている疑わしい投球動作に釘をさそうという狙いがある。   

・1997(H9)年以降、毎年のようにプロ・アマ合同野球規則委員会において、いわゆる投手の“二段モーション”について意見交換が行われた。その際、アマチュア側から、プロ野球が与える影響が大きいため、プロ側の規則適用に関する要請が行われた。 

・2005(H17)年(アテネ五輪の翌年)、アマチュア側の要請にプロ側も動き、NPB野球規則委員会が、“二段モーション”の投手がさらに増加し、国際大会やアマチュアへの影響を考えるとこのまま放置できないとして、2006年のシーズンから規則 8.01(a)・(b)(現 5.07(a)(1)・(2))を遵守・実行する旨を決定した。これにより10年間にわたる“二段モーション”論争もやっと終止符が打たれ、正しい投球動作の徹底に向けて、プロとアマがそろっ て一歩を踏み出すことができた。  

この頃、すでにアマチュアでも年齢に関わらず“二段モーション”で投球する投手が増えていて、上記通達に書かれている「反則投球とする基準が不明確、大会によって適用がまちまち等の混乱」が「しばしば問題」となっていった。 

・2016(H28)年、WBSCのU23ワールドカップ(メキシコ)の韓国対メキシコ戦において、球審を務めた日本の審判員が走者なしのケースで反則投球を適用した。守備側の監督から抗議があり、WBSCの審判長を含めて協議した結果、反則投球の判定を取り消した。 

・2017(H29)年、西武ライオンズの菊池雄星投手などに反則投球が適用され、投手の“二段モーション”が話題になった。 

・2018(H30)年、プロ・アマ合同野球規則委員会において、定義 38[注]を削除する改正が決定された。  

 ここで強調しておきたいのは、上記通達の中にある「技術的な面においても、マナーの面においても“二段モーション”は望ましい投球フォームではないという考え方に変更はなく、我々はあくまでも正規の(ナチュラルな)投球動作の確立を目指すことに変わりはない」ということを、プロ・アマ合同野球規則委員会で確認していることだ。     

定義 38 の[注]の削除により、走者がいる場合のボークの適用を整理すると、 次の表のようになる。

事      例                          罰則  適用規則

1 ストレッチをしようと動作を開始したが、途中でやめた。 ボーク 6.02(a)(1) 5.07(a)(2)

2 ストレッチの途中でいったん動作が止まったが、その  ボーク 6.02(a)(1) 5.07(a)(2)

まま両手を合わせてセットポジションをとった。       

3 投球動作を開始して自由な足を上げたが、途中で  ボーク 6.02(a)(1) 5.07(a)(1),(2)

やめて投球しなかった。                  

4 投球動作を開始して自由な足を上げ、いったん動  ボーク 6.02(a)(1) 5.07(a)(1),(2)

作が止まったが、そのまま投球した。          

5 投球動作を開始して自由な足を上げ、いったん動  ボーク 6.02(a)(1)  6.02(a)(3)

作が止まったが、そのまま塁に送球した。             5.07(a)(1),(2)

6 投球動作を開始して、自由な足を上げ下げして、   ボーク 6.02(a)(1) 5.07(a)(1),(2)

そのまま投球した。                     

7 投球動作を開始して、自由な足を上げ下げしてか   ボーク 6.02(a)(1) 6.02(a)(3)

ら、塁に送球した。                             5.07(a)(1),(2)   

※プロ野球では、ケース6について、自由な足を上げ下げして投球することは「一連の投球動作」との考えからボークとしない。 

※アマチュア野球では、走者が塁にいないとき、セットポジションをとった投手が完全に静止しないで投球した場合、規則 5.07(a)(2)[原注]の後段に該当すると審判員が判断すれば、クイックピッチとみなしてボールを宣告する場合がある。(下記「7走者がいないときはセットポジションで静止しなくてもよい」参照) 

※上記の表に該当しなくても、ボークルールの原点である[6.02a 原注]を厳格に適用することが求められる。    

最後に、投球動作を開始してから自由な足をいったん止めたり、または上げ下げしてから投球することに関する、ロドリゲスWBSC審判長(USA)のコメントを紹介したい。

『そのような投球動作をする投手が増えてきている。サンフランシスコ・ジャイアンツのジョニー・クウェイト投手は、いろいろ奇妙な動きをしてから投球している。しかし、ルールブックは、そのような投球をイリーガルピッチとしていない。U23ワールドカップのとき、日本の審判員がイリーガルピッチを宣告したが、アメリカの塁審がそれを変更したのも、それが理由だ。

 ところで、そのような投球動作は、アジアの投手がアメリカに来てから多く見かけるようになった。』 

投手がクラウチングスタイルから体だけ起こした後、それから腕を動かしてセットポジションに入る動作は、“二つの動作”となって、ストレッチの中断とみなし、ボークとなる。また、クラウチングスタイルで両手を合わせた状態で膝の上に置き、サインを見て、そこからセットに入るのは投球動作の中断・変更でこれもボークとなる。なお、体を起こしながら両腕も一緒に動かしてセットに入ることは正規の動作であり問題ない。(6.02(a)(1))

3版解説 ワインドアップポジション より>

ワインドアップポジションには次の三つの方法がある。

(1) 打者に面して立ち、両手を合わせて、軸足を投手板に触れて置く。他の足はフリー。このポジション(両手を合わせた状態)から、投手は投球に関連する一連の動作(自然な動き)を起こしたならば中断することなく、その投球を完了しなければならない。

(2) 打者に面して立ち、両手を離した状態で(通常は体の脇に下ろして)、軸足を投手板に触れて置く。他の足はフリー。このポジションから、投手は直接打者への投球に入る。このワインドアップポジションから、投手が一旦投球に関連して手、腕または足を動かせば、その投球を完了しなければならない。

(3) 打者に面して立ち、両手を離した状態で、軸足を投手板の上に置く。他の足はフリー。このポジションから(両手を離して)、投手は捕手からサインを受け、投球する前に両手を一定の位置(“ポーズ”〈静止〉)に持ってくる。このワインドアップポジションの場合、両手を身体の前方に持ってくる動作は、身体の他の部分が同時に動きを開始し、実際に投球に関連する動作を伴わない限り、投球動作が実際に始まったとはみなされない。

この三つの方法のいずれもが正規のワインドアップポジションであるが、この姿勢から(両手が離れているか合わさっているかを問わない)、投手は、

(1) 打者に投球することができる。

(2) 走者をアウトにしようとして塁に踏み出して送球することができる(たとえば最初に投手板をはずす必要はない)。投手が塁に送球する前に投球に関連する動作を起こさない限りそれは合法である。

(3) 投手板をはずすことができる。まず軸足からはずすことが必要である。(両手が離れているか合わさっているかに関係なく、塁上に走者がいるとき、投手がフリーの足を最初に投手板から外せばボークとなる)。(5.07(a)(1)[原注2])

ただし、アマチュア野球では、ワインドアップポジションの投手に対して、次のような制限を設けている。

ワインドアップポジションをとった右投手が三塁(左投手が一塁)に踏み出して送球することは、投球に関連した足の動きをして送球したとみなされるから、ボークとなる。(アマチュア内規③)

この動作は、投球動作と同じ足の動きとなるため、以前三塁走者がばたばたとこのけん制で三塁でアウトになるという事件が起きたので、アマチュア野球では上記のような制限を設けた。

投手が投球に関連する動作をして両手を合わせた後、再び両手をふりかぶることは、投球を中断または変更したものとみなされる。投球に関連する動作を起こしたときは、投球を完了しなければならない。(アマチュア内規③)

例題:走者満塁。投手はワインドアップポジションをとった。打者への投球に関連する動作を起こす前に、投手が走者をアウトにしようと一連の動作で二塁(右投手の場合は三塁側回り、左投手の場合は一塁側回り)に(または右投手が三塁に、左投手が一塁に)振り向いて、踏み出して送球した。

―――正規の動きである。(ただし、アマチュア野球では、ボークとなる)。(5.07(a)(1)[原注2]②、アマチュア内規③)

解説:

(1) 打者への投球を開始する前に、投手が両手を身体の前方で一定の位置で合わせても、両手を合わせる準備動作はまだ投球動作の開始とはみなさない。しかし、準備動作が投球に関連する自然な動きを伴えば、そのときは投手は、変更または中断することなく、その投球を完了しなければならない。

(2) 投手が実際の投球の前に一定の位置で、両手を合わせる姿勢をとらない場合、投球に関連する動作を起こしたらその投球を完了させねばならない。

ワインドアップポジションから投手はセットポジションまたはストレッチに移ることはできない。走者が塁にいればボークとなる。(同[原注2]③)

ワインドアップポジションでは、投手は両足をぴったりと地面に置かねばならない。(5.07(a)(1)②)

2007年の規則改正によって、投手は軸足を全部ではなく、軸足の一部が投手板に触れていれば構わないと改正になった。さらに、投手はワインドアップポジションにおいて自由な足を投手板の横(いずれでもよい)、投手板の前、投手板の上、または投手板の後ろに置き、投手板の横にステップすることが許される。これらは現在、普通に行われている動作である。これまで規則書では禁止をしていた。

改正になった規則のもとでは、

(a) 投手の軸足は一部(全部ではない)が投手板に触れていなければならない。これはワインドアップポジションとセットポジションの両方に適用される。改正規則では、投手は、軸足の一部が投手板に触れている限り、投手板の端から離れて投球しても構わない。

(b) ワインドアップポジションにおいて、投手の自由な足は、投手板の上であっても、前、横または後ろであってもいずれでも構わない。

(c) ワインドアップポジションにおいて、投手は投球に当たって横にステップすることも許される(以前は禁止)。

ただし、アマチュア野球では、投球姿勢が混乱することを懸念して、2007年の規則改正は採用せず、従来どおりの投手板の踏み方および自由な足の位置の制限を踏襲してきたが、2013年度から規則書どおりに改め、従来の投手の軸足および自由な足に関する規制をした[注]を削除して、5.07(a)(1)[注1]を次のとおり改正した。

[注1] アマチュア野球では、投手の軸足および自由な足に関し、次のとおりとする。

(1) 投手は、打者に面して立ち、その軸足は投手板に触れて置き、他の足の置き場所には制限がない。ただし、他の足を投手板から離して置くときは、足全体を投手板の前縁の延長線より前に置くことはできない。

(2) 投手が(1)のように足を置いて、ボールを両手で身体の前方に保持すれば、ワインドアップポジションをとったものとみなされる。

2018年(OBRは2017年)の改正により、5.07(a)(2)[原注]の末尾に次の一文が追加された。

 投手は投球に際して本塁の方向に2度目のステップを踏むことは許されない。塁に走者がいるときには、6.02(a)によりボークが宣告され、走者がいないときには、6.02(b)により反則投球となる。

2015年、MLBのマーリンズに在籍していたカーター・キャップス投手(右投げ)の投球スタイルが話題になった。セットポジションから投球動作を始め、踏み出した左足が地面に着く直前、投手板についている右足をホームプレート方向に50センチほど移動させ、そこから左足をさらに踏み出して投げる。MLBでは当初は黙認されていたが、2017年から規則違反の投球動作とされた。今回の改正は、このような動作を禁止するためのものである。

3版解説 セットポジション より 2016修正

投手は、打者に面して立ち、軸足を投手板に触れ、他の足を投手板の前方に置き、ボールを両手で身体の前方に保持して、完全に動作を静止したとき、セットポジションをとったとみなされる。この姿勢から、投手は、

① 打者に投球しても、塁に送球しても、軸足を投手板の後方(後方に限る)にはずしてもよい。

② 打者への投球に関連する動作を起こしたならば、中途で止めたり、変更したりしないで、その投球を完了しなければならない。

なお、アマチュア野球においても、投手の軸足および自由な足に関し、2013年度から規則書どおりに改め、従来の投手の軸足および自由な足に関する規制をした[注]を削除した。

セットポジションをとるに際して“ストレッチ”として知られている準備動作(ストレッチとは、腕を頭上または身体の前方に伸ばす行為をいう)を行うことができる。しかし、ひとたびストレッチを行ったならば、打者に投球する前に、必ずセットポジションをとらなければならない。

投手は、セットポジションをとるに先立って、片方の手を下に下ろして身体の横につけていなければならない。この姿勢から、中断することなく、一連の動作でセットポジションをとらなければならない。

投手は、ストレッチに続いて投球する前には、(a)ボールを両手で身体の前方に保持し、(b)完全に静止しなければならない。審判員は、これを厳重に監視し、投手が“完全な静止”を怠った場合には、ただちにボークを宣告しなければならない。(5.07(a)(2))

投手がセットポジションをとるにあたっては、投手板を踏んだ後、投球するまでに、必ずボールを両手で保持したことを明らかにしなければならない。その保持に際しては、身体の前面ならどこで保持してもよい。いったん、両手でボールを保持して止めたならば、その保持した個所を移動させてはならず、完全に身体の動作を停止して、首以外はどこも動かしてはならない。(同[注3])

なお、ボールを身体の前面ならどこで保持して止めてもよいが、同一打者のときに止める位置を1球1球変えたりすることは、打者を幻惑する意図がありと判断して、許されない。同一打者のときは同じ位置でなければならない。ただし、打者によって止める位置を変えることは構わない。高校野球では、同一投手は、1試合を通じて同じ位置でグラブを止めなければならない、と指導している。

セットポジションからの投球に際して、自由な足は、①投手板の真横に踏み出さない限り、前方ならどの方向に踏み出しても自由である。②ワインドアップポジションの場合のように、一歩後方に引き、そして更に一歩踏み出すことは許されない。(同[注4])

投手は走者が塁にいるとき、セットポジションからでも、プレイの目的のためなら、自由に投手板をはずすことができる。この場合、軸足は必ず投手板の後方にはずさなければならず、側方または前方にはずすことは許されない。(同[注5])

 

3版解説 投手が投げる際にグラブを叩く より>

投手が投球動作に移り、投げる際に両手を大きく離し、その後もう一度グラブを叩いてから投球する動作は、アマチュア野球では、投球動作の変更とみなすが、上記「4“二段モーション”」の項で書いた理由により、走者がいる場合にのみ指導事項とする。ただし、注意にもかかわらず繰り返されたときは、ボークを宣告する。(5.07(a)(2)[注 2]、 6.02(a)(1))

 

3版解説 投手がプレート上で手を動かす仕草 より>

投手がプレート上で捕手とサイン交換時、捕手や野手にサインを出すため胸マークや腕を触ることは、投球動作の変更・中断となり、ボークとなる。(6.02(a)(1))

3版解説 走者がいないときはセットポジションで静止しなくてもよい より>

2006年のOBRの改正で、規則5.07(a)(2)に次の[原注]が追加された。

[原注]走者が塁にいない場合、セットポジションをとった投手は、必ずしも完全静止をする必要はない。

しかしながら、投手が打者のすきをついて意図的に投球したと審判員が判断すれば、クィックピッチとみなされ、ボールが宣告される。6.02(a)(5)参照。

これは、当時のMLBの実態に合わせた改正といえる。セットポジションから投球する場合、ボールを両手で身体の前方に保持し、完全に静止しなければならない。なぜか?セットポジションは通常、走者がいるときに盗塁を防ぐ目的で用いる投球姿勢である。もし投手が「完全静止」しないで投球したら走者は盗塁できないので、フェアプレイの精神から規制しているルールだ。しかし、走者がいないときに、「完全静止」しなくても同じ動作で投球していれば、打者がタイミングを狂わされることはないということだ。

2007年のプロ・アマ合同委員会では、このOBRの改正を協議したが、止まっても止まらなくてもいいとなると、投手が作為的に動作を変えて投球することが想定され、そうなると打者も幻惑されるので認めるべきでないという結論になり、次の[注1]を追加した。

[注1]我が国では、本項[原注]の前段は適用しない。

2017年1月のプロ・アマ合同委員会において、プロ側から、この[注1]を削除するか、または「所属する団体の規定に従う」と改正することが提案された。アマチュア側としては、外国人投手が多く在籍するプロ側の事情は理解できるが、走者がいるときのセットポジションからの投球が乱れるのではないかとの懸念があるため、今しばらくは走者の有無にかかわらず、完全静止を義務付ける必要があるとの判断から、次のようにアマチュア野球限定の規則として残すこととした。

[注1]アマチュア野球では、本項[原注]の前段は適用しない。

2018年の規則改正において、定義38の[注]が削除された(上記「4“二段モーション”」参照)。アマチュア野球では、走者が塁にいないとき、セットポジションをとった投手が完全に静止しないで投球した場合、規則5.07(a)(2)[原注]の後段に該当すると審判員が判断すれば、クイックピッチとみなしてボールを宣告する場合がある。

3版解説 投手の投げ損ない より>

6.02(b)[原注]は、「投球動作中に、投手の手からとび出したボールがファウルラインを越えたときだけボールと宣告されるが、その他の場合は、投球とはみなされない。塁に走者がいれば、ボールが投手の手から落ちたときただちにボークとなる。」と規定している。

投球かどうか常識で判断するしかないが、投球とは、ボールが投手の手からとび出してファウルラインを越えるか、あるいはある程度の速度を持って本塁方向に向かってきたものをいう。

3版解説 イリーガルピッチのペナルティはどの時点で適用するのか より>

イリーガルピッチでも打者は打てるので、即ボールデッドではなく、球審は“イリーガルピッチ!”と発声するのみで、投球が完了し、打者が一塁へ進めなかったことを確認した時点で、イリーガルピッチのペナルティを適用する。ただし、投手が投げなかったときは、投手に投球を最初からやり直させる。

2018 年の規則改正(定義38の[注]の削除。前掲の「4“二段モーション”」 参照。 )により、自由な足の一時停止や二段モーションなどは、走者がいない場合はペナルティがなくなった。したがって、イリーガルピッチは、定義38のとおり投手板に触れないで投げた投球と、クイックリターンピッチに限定された。 (6.02(b)、定義 38)