09:走者三塁、打者スクイズで空振り、捕手の三塁走者に対する守備を妨害【5.09(b)(8)】

■具体的状況

1out、走者二・三塁、打者のカウント1ボール1ストライクでスクイズ
 投手は投球を大きく外側(一塁側)に外し、右打者は体を宙に浮かせスクイズを敢行するも投球に触れず、そのまま捕手の前に倒れこむ。(スクイズ空振り)捕手は三塁走者をアウトにするため送球しようとしたが倒れこんだ打者に妨害され送球できなかった。

■審判員アクション

①打者が空振り → 『ストライク』 
②打者が捕手を妨害 → 球審は、前方に進み出て大きく『タイム』 
③他の審判員も『タイム』 
④球審は、打者を指さして『インターフェアランス』 “That’s interference!” 
⑤次に、3塁走者を指さして『3塁走者、打者の守備妨害でアウト』 “Runner is out for batter’s interference!”
⑥今回のケースでは三塁に到達していた二塁走者を二塁に戻し、2out、カウント1ボール2ストライクで再開

注1)2アウトのときは、打者をアウトにします。 
注2)第3ストライクの宣告を受けてアウトになった打者が妨害した場 合は、打者と3塁走者の両者をアウトにします。【6.01(a)(5)】 
注3)第3ストライクの宣告を受けただけで、まだアウトになっていない打者走者(振り逃げの状態)が妨害した場合は、3塁走者ではなく、打者走者をアウトにします。【6.01(a)(1)】 
注4)この妨害のとき塁上に他の走者がいた場合は、妨害発生の瞬間の 占有塁を与えます。

■解説

2006年規則改正、項番は旧番号(過去に経緯があり規則が改正されています)反則打球とそうでない場合があり、審判員の皆さんは整理しといてください。

スクイズプレイとは 打者がバントする、三塁走者は得点しようとするプレイ

7.08(g)[注二]の改正(前段は反則打球、後段は打者の守備妨害)【新5.09b8(注2)】

まず、こんな場面を想定してください。一死走者三塁、どうしても1点欲しいケース、ここでスクイズが行われた。三塁走者は投手の投球動作開始と同時に本塁に走ってきた。投手はスクイズに気付きウエストした。打者は必死になってその球に飛び付き、バットに当てたがファウルとなった。
スクイズ失敗。このとき、打者は片足をホームベースの上に置いてボールにバットを当てていた。かつて甲子園で実際にあったプレイです。さて、審判員のあなたはどう処置しますか。

そうですね、このスクイズプレイのように走者が得点しようとしたときと反則打球とが重なった場合、規則7.08(g)[注二]に記載の通り、三塁走者をアウトにして打者はノーカウントで打ち直しでしたね。これが今までの解釈でした。その解釈を、今年度、思い切って変更しました。その理由を以下に説明します。

この[注二]が生まれた背景は、さかのぼること56年前の昭和25年(1950年)に開催された米・クラブチーム(ケープハーツ)と全鐘紡との試合で起きたスクイズプレイでした。球審は三塁走者を生かそうとして打者が反則打球をしたから三塁走者がアウトと判定しましたが、米国チームは反則打球で打者アウトを主張して譲らず、親善試合だったのでひとまず日本側が折れて打者アウト、三塁走者帰塁で試合再開となりました。しかし、試合が終わっても日本側はこの
処置に納得せず、米・大リーグの審判員に質問状を出したところ、日本側の結論で正しいとの回答を得て、翌昭和26年にこの[注二]が生まれた経緯があります。

わが国は、このようなケースでは、打者が反則行為で捕手の守備を妨害したと解釈し、規則6.06(a) 【新6.03a1】の適用除外例として打者ではなく、守備の対象である三塁走者をアウトにしてきました。

この解釈は、当時の論議は分かりませんが、スクイズの成功がおぼつかないとき、三塁走者を生かそうとして打者が意図的に反則打球を行い、犠牲になってアウトになれば、攻撃側はもう一度スクイズの機会をつかめるではないか、しかしそんなずるい野球は許してはいけない、アンフェアだ、だから守備妨害を適用して、懲罰的に、打者ではなく守備の対象である三塁走者をアウトにすべきだと先達たちは考えた結果だと推測されます。

このように7-08(g) 【新5.09b8】を適用したのは、三塁走者を生かそうとして反則打球を意図的に行うことを防止する、“教育的”なねらいがあったと思われますが、現実は、スクイズプレイの際、打者は必死になってバットにボールを当てようとし、無意識のうちに片足をバッターボックスの外に出していたということが多いのではないでしょうか。意図的かどうかを問わず、守備妨害が適用されてきました。意図的かそうでないか、球審が見分けるのは大変難しいことです。

この日本の解釈が果たして妥当なのか、長い間疑問になっていました。その疑問は、7.08(g) 【新5.09b8(注2)】の「打者が本塁における守備側のプレイを妨げた場合」というのは同[注一][注二]の説明のように素直に受け取るべきではないのか、反則打球のケースにまで適用して同[注二]の中の例示に含めるのは無理があるのではないかという意見、反則打球はあくまで打者の反則行為により打者をアウトにすべきであるという意見、そして国際的にも打者をアウトにしているという意見です。

日本野球規則委員会はこうした考えを支持すると同時に、正しい野球もだいぶ浸透し、この立法のねらいももう引っ込めてもよいのではなかろうか、そう判断し、思い切って同[注二]を改正することにしました。大改正と言ってよいでしょう。併せて、できるだけ例外規定をなくし、ルールはシンプルに分かりやすくする、そして国際基準に合った解釈をするという当委員会の方針に沿ったものです。

以上のように、走者が得点しようとしているときと打者の反則打球が重なった場合は、打者を反則打球でアウトにし、走者を三塁に戻して試合再開と変更になります。

参考までに、反則打球とは打者がバッターボックスの外に出てバットにボールを当てた場合のことですが、では走者が得点しようとしたとき、打者が足をバッターボックスの外に出した、しかしバットはボールに当たらなかった、このケースはどうなるでしょう?(今回のケース)

この場合、打者が足を外に出したり、何らかの動作で捕手の守備を妨害すれば、7.08(g) 【新5.09b8】により守備の対象である三塁走者がアウトになります。二死のときは打者がアウトになります。

また、走者が本塁に向かってスタートを切っただけの場合とか、一度本塁へは向かったが途中から引き返そうとしている場合には、打者が捕手を妨げることがあっても、本項は適用されず、6.06(c)【新6.03a3】により、打者が反則行為でアウトになります。ただ離塁しているに過ぎない三塁走者を刺そうとする捕手のプレイを打者が妨げた場合も同様、打者がアウトになります。

ここで誤解しないように整理しますと、走者が得点しようとしたときの打者の守備妨害は7.08(g) 【新5.09b8】により走者がアウト、それ以外の打者の守備妨害は打者がアウトになるということです。

関連して、

・スクイズのケース、打撃を完了して打者から走者になったばかりで、まだアウトにならない打者が妨害を行なったときには、その打者走者がアウトとなり、ボールデッドとなって、三塁走者を投手の投球当時すでに占有していた塁、すなわち三塁へ帰らせる。(7.08(g)[注三]、6.05(g)、7.08(b))

・アウトになったばかりの打者が、味方の走者に対する野手の次の行動を阻止するか、あるいは妨げた場合、その走者はアウトになる。(7.09(f))

もう一つ、前記の改正文をよく見てください。咋年まで7.08(g)[注一][注二]の文中「三塁走者」とあったのを「三塁」の二文字を削除し、「走者」と改正しました。この意味は、「走者が得点しようとしたとき」の「走者」は三塁走者に限定されるものではなく、例えば二塁走者でも投手のワイルドピッチで三塁を回って本塁を突くケースもあるように、“三塁から走ってくる走者”ということで、いずれの走者も対象になり得ることから「走者」としたものです。昨年までの表現ですと、「三塁走者」だけのことを言っていると誤解されるおそれもありました。