500-189試合の進行:指名打者制で、投手が他の守備位置についた。その後、指名打者はどうなるか。

措置:投手が他の守備位置についた場合、以後指名打者の役割は消滅する。
5.11(a)(8)、以下の例題5

指名打者については、2011年の規則改正で詳細にかつ箇条書きに分かりやすく規定されている(5.11 (a))。
規則5.11(a)の(8)、(9)、(10)、(11)、(12)、(14)に“指名打者の役割は消滅す”と書かれている。これは、これらの規定により“指名打者の役割が消滅した”場合、それ以後の選手の交代や打撃順の指名については、指名打者ルールを使用していないときと同じように進めていくことになる。

試合開始のときの先攻チームの打撃順を次のように設定し、指名打者の役割が消滅した後の打撃順指名について例題で確認したい。
投手A、5番DH:B、6番レフトC、7番ショートD、8番ファーストE

例題1:5番DH のBがレフトの守備についた。

――DH は自分の番のところで打撃を継続する。投手AはレフトのCの打順に入る。(5.11(a) (5))

打順:5番レフトB、6番ピッチャーA

例題2:5番DH のBがレフトの守備につき、ショートもDからFに交代した。

――投手AはレフトCまたはショートDのどちらの打順に入っても良い(5.11(a) (5))。指名打者は、多様な交代があっても打順を変えることは許されない(5.11(a) (7))。

打順①:5番レフトB、6番ピッチャーA、7番ショートF

打順②:5番レフトB、6番ショートF、7番ピッチャーA

例題3:5番DH のBがレフトの守備に、投手がファーストの守備につき、救援投手Gが登板した。

――DH は自分の番のところで打撃を継続し、ファーストAと救援投手G はレフトCまたはファーストE のどちらの打順に入っても良い(5.11(a)(5)、同(a)(7))。

打順①:5番レフトB、6番ピッチャーG、8番ファーストA

打順②:5番レフトB、6番ファーストA、8番ピッチャーG

例題4:1回の表、攻撃側の監督は5番DH に代打を申し出た。この交代は認められるか。

――相手チームの先発投手が交代していない場合、この交代は認められない。(5.11(a)(2))

例題5:投手Aがファーストの守備につき、ファーストEが投手になった。

――投手だったAはDH の打順に入る。(5.11(a)(8))

打順:5番ファーストA、8番ピッチャーE

例題6:投手Aがファーストの守備につき、ファーストEに代わって救援投手Gが登板した。

――ファーストの守備についたAはDH のB、または、ファーストEのどちらかの打順を選択することができる。(5.11(a)(8)、5.10(b)[原注])

打順①:5番ピッチャーG、8番ファーストA

打順②:5番ファーストA、8番ピッチャーG

上記の例題3、5、6の投手A は、規則5.10 による投球義務を果たしていることが条件となる。

また、たとえば、1 回表、相手チームの先発投手が交代することなく4番打者で攻撃が終わり(DH のBは打席に立っていない)、1回の裏に例題5のような交代はできるだろうか。答えは、認められる。指名打者が一度も打席に立たないまま(相手の先発投手は交代していない)、そのチームの投手が他の守備位置についたり(5.11(a)(8))、他の守備位置にいる選手が投手になったりした場合(同(14))、この時点で指名打者の役割は消滅することになるため、規則5.11(a)(2)は適用されなくなり、その指名打者は試合から退くこともできる。

なお、規則5.11 には、指名打者が負傷または病気のために試合に出場することが不可能になったときの、5.11(2)に対応する規定が書かれていない。仮にこのような状況になった場合、常識として交代を認めることになるが(監督は控えの選手から新たなDH を指名し、退いたDH は試合に出場したものとみなされる)、規則としては投手の規定である5.10(f)の準用や、8.01(c)の適用とすることになる。

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