2008年度改正規則解説 ~改正理由と適用上の解釈について~
麻生紘二<日本野球規則委員会委員>

◆プレイに関する改正は5カ所
日本野球規則委員会は、去る1月28日、今年度の改正規則を発表しました。昨年は33カ所におよぶ大改正がありましたが、今年はプレイに関する規則の改正は5カ所とおとなしい改正にとどまりました。しかし、質的には大変中味のある改正となっていますので、注意深く吟味のほどお願いしたいと思います。
今年は、プレイに関する規則よりも、むしろ記録に関する規則の大改正、大幅な修正が中心になりました。実は、この記録についての規則も昨年大改正になっていましたが、量が膨大だったことと緊急性が薄かったことから、わが国ではプレイイングルールを優先させた経緯があり、1年遅れの改正となりました。

(1)2.54 オーディナリーエフォート(普通の守備行為)の追加
(2)7.08(a)(1)の改正
(3)7.08(a)[注一]の改正
(4)7.08(e)の改正
(5)8.02(c)[注二]の追加
(6)10-00記録に関する規則の改正(解説省略)
では、以上のうち、プレイに関する規則5項目について、改正理由の解説をしていきます。

■2.54 0rdinary Effort「オーディナリーエフォート」(普通の守備行為)の追加
Ordinary Effort「オーディナリーエフォート」(普通の守備行為)-天候やグラウンドの状態を考慮に入れ、あるプレイに対して、各リーグの各守備位置で平均的技量を持つ野手の守備行為をいう。
[原注]この用語は、規則2.40のほか記録に関する規則でたびたび用いられる、個々の野手に対する客観的基準である。言い換えれば、ある野手が、その野手の最善のプレイを行なったとしても、そのリーグの同一守備位置の野手の平均的技量に照らして劣ったものであれば、記録員はその野手に失策を記録する。
これは、2.00の用語の定義のところに追加されたもので、特に必要ないとも思いましたが、「原文に忠実に」を基本にそのまま記載することにしました。2.40のインフィールド・フライの規則に「普通に守備行為をすれば」という表現がありますが、では、「普通に守備行為をすれば」とはどういうことを言うのかとの疑問から追加になったと思われます。なかなか言葉で表すのは難しいですが、「普通に」とは「平均的技量」で判断するということですが、実戦では特に意識する必要はなく、これまで通りで構いません。

■7.08(a)(1)および(a)[注一]の改正

(a)(1) 走者が、野手の触球を避けて、走者のべ一スライン(走路)から3フィート以上離れて走った場合。
ただし、走者が打球を処理している野手を妨げないための行為は除く。
この場合の走者のべ一スライン(走路)とは、タックプレイが生じたときの、走者と塁を結ぶ直線をいう。

 [注一]通常走者の走路とみなされる場所は、塁間を結ぶ直線を中心として左右へ各3フィート、すなわち6フィートの幅の地帯を指すが、走者が大きく膨らんで走っているときなど最初からこの走路外にいたときに触球プレイが生じた場合は、本項(1)のとおり、その走者と塁を結ぶ直線を中心として左右へ各3フィートが、その走路となる。

いわゆるラインアウトに関する規則の改正です。以前から日米間でラインアウトの解釈が違うのではと指摘されていましたが、昨年Official Baseball RulesにMLBの解釈が明記されたことから、わが国も従来の解釈を改めることにしたものです。

従来、「走者が、野手の触球を避けて、塁間を結ぶ直線から3フィート以上離れて走った場合」、走者はラインアウトでアウトとなっていました。つまり、塁間を結ぶ直線を中心に左右3フィート、すなわち6フィートの地帯を通常走者の走路と定義付けていました。そして、同じく[注一]では、走者がこの走路外にいたときに触球プレイが生じた場合、走路から遠ざかるようにして野手の触球を避けたときは、ただちにアウトとなっていました。

今回の改正では、本来の走者の走路は6フィートの地帯であることには変わりはありませんが、この地帯の外をやむを得ず膨らんで走っているときに触球プレイが生じた場合でも、走者と塁を結ぶ直線を中心に左右各3フィートがその走者の走路として認められることに変わりました。したがって、走者が基準になるわけですから、分かりやすく言えば、走者が6フィートの竹竿を持って走っているイメージです。

このときに「走者と塁を結ぶ直線」とありますが、「塁」とはどちらの塁を指すのかという疑問が起きます。走者に近い塁なのか、あるいは走者が向かおうとしている塁(あるいは走者の体が向いている方の塁)なのかということですが、規則委員会では後者の解釈を採ることにします。理屈上は、ランダウンプレイではその塁がくるくる変わることになりますが、通常ランダウンプレイはべ一スライン上で行われることから、実戦のランダウンプレイでは従来と同じ対応となると理解してください。

また、規則では「打球を処理している野手を妨げないための行為は除く」とあります。自分の走路内を走っているからといって、守備をしている野手を避けないで接触すれば守備妨害になることは言うまでもありません。守備優先ですから野手を避けねばなりません。このときには走路から3フィート以上離れても違反行為ではなく、むしろ正当な行為であり、そこで触球行為が起きた場合、瞬間的に野手を避けた走者の位置を基準に3フィートが適用されます。

ただし、例えば走者一塁で二塁ゴロが打たれ、前進してきて走路上で守備しようとした二塁手を避けるために、一塁走者が外側に逃げたとします。普通にこのプレイが行われれば何ら問題ないのですが、一塁走者が単に野手を避けるためだけでなく、“意図的に”タックまで避けようとわざと必要以上に大きく外側へ逃げたような場合、さらにそこから3フィートがあるのかといった疑問が生じます。めったにないプレイとは思いますが、もしこんなことがあれば、それは3フィートの悪用、乱用にあたり、そんなずるい行為まで規則で認めているわけではありません。意図的に触球行為を避けるために「3フィート破り」をしたと審判員が判断すれば、ただちにアウトが宣告されます。「必要以上に」とはどの程度かということですが、それは常識の範囲内と言うしかありません。

■7.08(e)の改正
(e)打者が走者となったために、進塁の義務が生じた走者が次の塁に触れる前に、野手がその走者またはその塁に触球した場合。(このアウトはフォースアウトである)

ただし、後位の走者がフォースプレイで先にアウトになれば、フォースの状態でなくなり、前位の走者には進塁の義務がなくなるから、躰に触球されなければアウトにはならない。また、(以下略)

今回の大改正と言っていいでしょう。まずは次の例題を見てください。

例題:一死一・三塁。打者はライトにシングルヒット。三塁走者は生還。一塁走者は一挙三進した。
打者はライトの三塁送球の間に二塁に進もうとして、三塁からの送球でタッグアウトになった(二死)。この後で二塁手は、二塁べ一スにボールをつけて、一塁走者が二塁を空過したとアピール、これが認められて三死となった。さて、得点は1点?それとも0点?

この解釈を巡っては、長年「第三アウトはフォースアウトではないので、この(二塁での)アウトより早く本塁に達していた三塁走者の得点は、堂々たる得点ということになります」(参考:鈴木美嶺著『Q&A方式101の実例野球ルール』1985年)が通説となっていましたが、最近になって本当にそうですか、違うのではないですかといった疑問が多数寄せられていました。

そこで規則委員会としても正しい解釈を求めて過去の検討資料の調査、米国への照会などを行って、今回の改正に至りました。結論から言えば、上記例題の答えは「得点ゼロ」となります。

では、なぜかについて説明します。
鈴木氏の著書では、「打者が右前安打した時点ではフォースの状態が生まれます。しかし、その打者が二塁に進もうとしてアウトになったことで、フォースの状態は消えてしまいます。そのあとで二塁でアピールアウトになったのは、フォースアウトではないわけです」と解説されています。

長年そのように教わり、理解してきましたが、ここでは“後位の走者が先にアウトになれば、フォースの状態でなくなり”だけに焦点が当たった結果、「フォースアウトではない」との結論が導き出されているように推定されます。果たして、「例題のように後位の走者がフォースアウトではなくタッグアウトの場合も、先にアウトになっているからフォースの状態でなくなるのか」、「二塁空過のアピールアウトはフォースアウトなのかどうか」が問題を解くカギとなってきました。

まず、規則委員会は米国に照会しました。その結果、MLB規則委員、米アマチュア野球連盟規則委員長いずれも即座に「そのケースは、得点ゼロだ。なぜなら、フォースの状態で走者が塁を空過しても、フォースの状態は依然残る。したがって、第三アウトのアピールアウトはフォースアウトである」との回答でした。

また、原文はどうなっているのか、わが国の規則書の翻訳の仕方が違うのか、もう一度原文を精査したところ、原文では“However,if a fo11owing runner is putout on a forceplay,the force is removedand”とあるのが、わが国では「ただし、フォースプレイにおいて、後位の走者が先にアウトになれば」と訳されており、“on a force play”の訳し方があいまいさを生んでいるのではとの感を強くしました。

こうした調査を踏まえ、規則委員会としては、「フォースの状態で塁を空過しても、フォースの状態は依然残ること」を確認した上で、わが国の規則書を上記のように「後位の走者がフォースプレイで先にアウトになれば」と訳し直すことにした次第です。「フォースプレイで先に」と直接的な表現になり、解釈がより明確になったのではと考えます。

ちなみに、1971年までは今回改訂のような訳文になっており、その後、規則委員会でどのような検討がなされたのか分かりませんが、1972年以降、「ただし、フォースプレイにおいて」と表現が変わっています。したがって、今回、1971年以前の訳文に戻ったということになります。

やれやれ、長年の疑問がこれで解決と思っていましたら、空過のケースとは異なりますが、次のような質問が寄せられました。よく勉強しているなと驚きました。

例題1:走者一塁、ヒットエンドラン。打者が一塁頭上にフライを打ち上げた。しかし、一塁手はこれを落球、たまたま一塁ベ一スを回って目の前に走ってきた打者走者に触球し、アウト。このとき、一塁走者はフライが捕られると思い、二塁ベ一ス近くまで来ていたのを慌てて一塁へ戻りかけたが、一塁手が落としたため、再び二塁べ一スに向かおうとして一・二塁間にいた。一塁走者の二塁でのプレイはフォースプレイか。

例題2:同じようなケースで、打者が今度は外野飛球を打ち上げた。捕球されそうなので、一塁走者は一塁べ一スの方へ戻っていた。しかし、外野手はその飛球を落としてしまった。このとき、打者走者は一塁を回って打球を見ていた一塁走者を追い越してしまい、追い越しアウトとなってしまった。一塁走者の二塁でのプレイは?

例題3:走者一・二塁。打者は外野ヘヒット。二塁走者が二・三塁間で転倒した。一塁走者は二塁を回って二塁走者のすぐ後ろまで来ていた。外野から返球を受けた遊撃手のすぐ前に一塁走者が来ていたので遊撃手は一塁走者にタックし、一塁走者はアウトになった。では、二塁走者の三塁でのプレイはフォースプレイかどうか。

いずれも、後位の走者がフォースプレイでアウトになったわけではないので前位の走者のフォースの状態は消えず、残っているのかという質問です。野球の常識からいって、どうみても一塁走者の二塁でのプレイはフォースプレイではない。それはその通りですが、では、その根拠はどの条文か、7,08(e)の条文との関連をどうしたらよいのか、フォースプレイでないとすると条文の解釈と矛盾するようにも思えます。

これに対しては、規則委員会では、次の解釈を統一見解とすることにしました。
「後位の走者がアウト(アウトの性質を問わず)になった時点でフォースの状態で追い出された前位の走者が進むべき次の塁に到達していなければ、前位の走者には進塁の義務がなくなるから前位の走者のフォースの状態は消え、その走者は触球されなければアウトにならない」(このことは7-08(e)の最初の2行の反対解釈からも可能と考えます)。もっとシンプルに言えば、打者走者がアウトになった時点ですべての走者のフォースの状態は消えるわけです。

なお、「ただし書き」は、そもそもリバース・フォースダブルプレイを想定したものと思われます。これでひとまず解決ですが、このように、規則というのはすべてのプレイを包含、もしくは表現することは不可能で、あちこちに規則の盲点が潜んでいるため、条文の字句の背景まで理解しようと努めることが大事です。

■8.02(c)[注二]を追加
[注二]アマチュア野球では、本項ペナルティの後段を適用せず、このような遅延行為がくり返されたときは、ボールを宣告する。
これは従来、アマチュア内規の⑰で、打者がバッターボックスにいるときに、投手が捕手以外の野手に送球して、故意に試合を遅延させた場合の罰則を取り決めていましたが、それを8・02(c)の[注二]として追加したものです。

■規則適用上の解釈の確認
次に、日本アマチュア野球規則委員会で確認した規則適用上の解釈について、3点説明します。

(1)規則8・05(c)[原注][注]の(場所の如何を問わない)の解釈について
[注]では、投手が三塁へ腕を振って送球する動作(偽投)をした勢いで軸足が投手板からはずれた(場所の如何を問わない)場合には、そのまま振り向いて一塁へ送球することは許される、と規定されています。

従来、アマチュア野球では、この(場所の如何を問わない)を、(場所の如何を問わない。ただし投手板の上を除く)というふうに解釈してきました。つまり、[注]に言う動作で一旦投手板からはずれた軸足が、再び投手板の上に落ちれば、“また投手の資格に戻る”、したがって、一塁へけん制するには投手板をはずさないといけないし(例外は走者が二塁へ走ったとき)、一塁へのけん制を途中で止めることもできません。

しかし、“また投手の資格に戻る”という考え方は実務上不自然であることから、思い切ってこれまでの解釈を改め、一旦軸足が投手板からはずれてしまえば、その後、軸足がどこへ落ちょうと(投手板の上でも構わない)、投手の資格を失って野手の資格になるとしました。したがって、野手ですから塁へ送球してもしなくても問題ありません。この点はプロと同じ解釈になりました。

ああ、そうですかで終わりそうですが、投手の資格、野手の資格で大きな違いが出てくることにお気づきでしょうか。つまり、投手の資格なら、投手の投手板上から走者をアウトにしようとした送球がボールデッドの個所に入った場合、一個の塁が与えられるわけですが(7.05(h))、野手になると、二個の塁が与えられる(同(g))ことになりますので要注意です。

(2)規則8.05(c)関連 走者二・三塁での連続偽投の解釈について
例えば、走者二・三塁で、投手がまず三塁へ偽投してブラフをかけ、引き続き投手板を踏んだまま二塁へ偽投または送球をした。このプレイは許されるのか、あるいはボークとなるのか。

二塁、三塁へは偽投が許されているので、上記のケースは構わないのではないかという考え方もありますが、同上委員会では、「ある塁にプレイ(偽投)をして、引き続き他の塁にプレイ(偽投または送球)をする場合には、投手板をはずさないといけない。はずさなかった場合には、(走者を騙す意図があるので)ボークとする」を統一解釈とすることにしました。

(3)規則7.10(b)[付記](2)関連 本塁の踏み直しの解釈について
例えば、走者三塁で外野へ飛球が打たれた。三塁走者はタックアップして本塁へ。外野からの返球は悪送球となってダッグアウトに入ってしまった。このとき、三塁コーチャーが、本塁を踏んだ三塁走者に、リタッチが早かったので三塁を踏み直せと指示した。果たして、本塁を踏んだ三塁走者は、三塁、本塁と踏み直しができるのだろうか。

[付記](2)では、ボールデッドのもとでは、空過した塁の次の塁に達すれば、その空過した塁を踏み直すことは許されない。そして、[注四]では、本項[付記]は、飛球が捕らえられたときのリタッチが早かった走者にも適用される、と規定されています。

本塁には「次の塁」がないから、一切踏み直しはできないのかどうか。例えば、走者二塁で外野飛球が打たれ、二塁走者はタックアップして三塁へ。三塁セーフ。その後、外野から三塁への返球が悪送球となってダックアウトヘ入ってしまった。この場合の二塁走者の「次の塁」は(ボールデッドになったときには三塁に達していたので)本塁となります。

同様の解釈で、問題のケース、三塁走者が外野からの悪送球がダッグアウトに入ったときに、三本間(まだ本塁を踏んでいない)にいた場合には、この走者の「次の塁」である本塁をボールデッド中に踏んでしまえば、三塁、本塁を踏み直すことはできないが、本塁を踏んでしまった後にボールデッドになった場合は、(「次の塁」はないので)その走者がダッグアウトに入ってしまわない限り、三塁、本塁の踏み直しはできるとの解釈を日本アマチュア規則委員会は採ることにしました。

■アマチュア内規の改訂について
現在、アマチュア野球では19項目から成るアマチュア内規(1999年発行)を定めていますが、今年度、不要と思われるものを削除し、修正、追加などの見直しを行い、13項目の新アマチュア内規(2008)を発行しましたのでお知らせします。
その中、主な改訂は次の通りです。

新 内規②(旧③) 審判員がインプレイのとき使用球を受け取るを修正
「また、べ一スコーチが同様のケースで使用球を受け取った場合も、受け取ると同時にボールデッドとするが、走者はボールデッドになったときに占有していた塁にとどめる」を追加しました。

新 内規⑬オブストラクションの厳格適用
捕手または野手が、あらかじめ塁線上およびその延長線の塁上に位置して(足または脚を置いて)送球を待つことを禁ずる。違反した場合は、オブストラクションとなる。(規則7.06a)

オブストラクションの規定は、規則7.06に明記されていますが、捕手がボールを持たないでべ一スライン上に立っていたり、ホームベースを巧妙にふさぐプレイは、依然として目につきます。それは、走者と捕手がぶつかって大事故につながる危険性を多分にはらんでいることから、プレーヤーの身体の安全を考え、あえてオブストラクションの厳格適用をアマチュア内規に追加しました。

プレーヤーたちの将来を一つの危険なプレイから台無しにしてしまわないように、審判員だけでなく、指導者の方々が日ごろからこうしたアンフェアかつ危険なプレイを行わないよう厳しく指導していただくようお願いします(「高校野球審判の手引き」も参考に)

公認野球規則 アマチュア内規 2008
<目次>
①ストライクゾーン
②審判員がインプレーのとき使用球を受け取る
③アウトの時機
④最終回裏の決勝点
⑤二死、四球暴投、決勝点で打者一塁へ進まず
⑥正式試合となる回数
⑦次回の第一打者
⑧オブストラクションの厳格適用
⑨打者の背後にウェスドボールを投げる
⑩アピールの場所と時期
⑪ワインドアップポジションの投手
⑫投球する手を口または唇につける
⑬投手の遅延行為
この内規集は、公認野球規則適用上のアマチュア野球規則委員会の統一解釈を収録したもので、公認野球規則と同等の効力を持つものである。
なお、この内規は、二〇〇八年のルールに基づいたものであり、今後ルール改正があれば、適用上の解釈にも変更が加えられるかもしれないことをお断わりしておく。

① ストライクゾーン
アマチュア野球では、ストライクゾーンの下限に関してだけ、ボールの全部がひざ頭の下部のラインより上方を通過したものとする。(規則2・73)

 ② 審判員がインプレイのとき使用球を受け取る
スリーアウトと勘ちがいした守備側が、使用球を審判員に手渡したのを審判員が受け取った場合は、規則3・15を準用する。審判員が使用球を受け取ると同時にボールデッドとし、受け取らなかったらどのような状態になったかを判断して、ボールデッド後の処置をとる。また、ベースコーチが同様のケースで試合球を受け取った場合も、受け取ると同時にボールデッドとするが、走者はボールデッドになったときに占有していた塁にとどめる。(規則3・15)

③ アウトの時機
アウトが成立する時機は、審判員が宣告したときではなくて、アウトの事実が生じたときである。第三アウトがフォースアウト以外のアウトで、そのアウトにいたるプレイ中に走者が本塁に達するときなどのように、状況によっては速やかにアウトを宣告しなければならない。^規則4・09a[注1])

④ 最終回裏の決勝点
正式試合の最終回の裏かまたは延長回の裏に、規則7・07規定のプレイで三塁走者に本塁が与えられて決勝点になる場合には、打者は一塁に進む義務はない。(規則4・09b、7・07)

⑤ 二死、四球暴投、決勝点で打者一塁へ進まず
最終回裏、走者二塁、打者の四球(フォアボール)目が暴投または補逸となって決勝点が記録されるとき、四球の打者が一塁へ進まなかった場合は、規則4・09(b)のように球審が自ら打者のアウトを宣告して、得点を無効にすることはできない。

打者が一塁に進まないまま、守備側が何等の行為もしないで、両チームが本塁に整列すれば、四球の打者は一塁へ進んだものと記録される。

打者をアウトにするためには、両チームが本塁に整列する前に守備側がアピールすることが必要である(規則7・10(d)注2)。しかし、守備側がアピールしても、打者は一塁への安全進塁権を与えられているので、打者が気付いて一塁に到達すれば、アピールは認められない。

 守備側のアピールを認めて打者をアウトにする場合は、
(イ)打者が一塁に進もうとしないとき
(ロ)打者が一塁に進もうとしたが途中から引き返したときである。
(規則4・09b、7・10d注2)

 ⑥ 正式試合となる回数
審判員が試合の途中で打ち切りを命じたときに正式試合となる回数については、規則4・10(C)に規定されているが、各種大会などでは、この規定の適用に関して独自の特別規則を設けることができる。

大会によっては、一定以上の得点差、たとえば、五回10点差、七回以降7点差など、得点差によってコールドゲームとし、正式試合とする特別規則もある。(規則4・10c)

⑦ 次回の第一打者
たとえば二死、打者のボールカウント2-1後の投球のときに、三塁走者が本盗を企てたが得点とならないで攻守交代になったような場合、次回の第一打者を明らかにするため、球審は、打者が三振でアウトになったのか、走者が触球されてアウトになったのかを明示しなければならない。(規則6・01b、6・05n)

⑧ オブストラクションの厳格適用
捕手または野手が、あらかじめ塁線上およびその延長線上の塁上に位置して(足または脚を置いて)送球を待つことを禁ずる。違反した場合は、オブストラクションとなる。(規則7・06a)

⑨ 打者の背後にウェスドボールを投げる
投手がスクイズプレイを防ぐ目的で、意識的に打者の背後へ投球したり、捕手が意識的に打者の背後に飛び出したところへ投球したりするような非スポーツマン的な行為に対しても規則7・07を適用し、走者には本塁を与え、打者は打撃妨害で一塁へ進ませる。(規則7・07)

⑩ アピールの場所と時期
守備側チームは、アピールの原因となった塁(空過またはリタッチの失敗)に触球するだけでなく、アピールの原因でない塁に進んでいる走者の身体に触球して、走者の違反を指摘して、審判員の承認を求める(アピール)ことができる。この場合、アピールを受けた審判員は、そのアピールの原因となった塁の審判員に裁定を一任しなければならない。

アピールは、ホールインプレイのときに行なわれなければならないので、ボールデッドのときにアピールがあった場合は、当該審判員は「タイム中だ」ということとする。(規則7・10)

⑪ ワインドアップポジションの投手
ワインドアップポジションをとった右投手が三塁(左投手が一塁)に踏み出して送球することは、投球に関連した足の動きをして送球したとみなされるから、ボークとなる。

投手が投球に関連する動作をして両手を合わせた後、再び両手をふりかぶることは、投球を中断または変更したものとみなされる。投球に関連する動作を起こしたときは、投球を完了しなければならない。(規則8・01a)

⑫ 投球する手を口または唇につける
規則8・02(a)(1)のペナルティに代えて、審判員はその都度警告してボールを交換させる。(規則8・02a)

⑬ 投手の遅延行為
走者がいるとき、投手が投手板から軸足をはずして、走者のいない塁に送球した場合、または、投手板上からでも軸足を投手板からはずしても、塁に入ろうとしていない野手に送球した場合には、投手の遅延行為とみなす。(規則8・02c、8・05d、8・05h)

二〇〇八年二月
日本アマチュア野球規則委員会