プロ・アマ合同の日本野球規則委員会は、2023年12月15日に2024年度の公認野
球規則の改正を発表しました。今回は9項目が改正されましたが、その主な内容は、
一塁、二塁、三塁のべースサイズの拡大、投球前における内野手の守備位置の制限、
延長回に入った際の実施方法などです。
以下、改正のポイントについて解説します。

(1) 2.01 競技場の設定に関する改正
2.01 を次のように改める。
①第6段落を次のように改める。(下線部を改正)
本塁からバックストップまでの距離、塁線からファウルグラウンドにあるフェンス、スタンドまたはプレイの妨げになる施設までの距離は、60フィート(18.288
メートル)以上を推奨する。
②最終段落の末尾に次を加え、【注】を追加する。
ただし、内野の境目となるグラスラインは、投手板の中心から半径95フィート
(28.955 メートル)の距離とし、前後各1フィートについては許容される。しか
し、投手板の中心から94フィート(28.651メートル)未満や96フィート(29.26
メートル)を超える箇所があってはならない。
【注】我が国では、内野の境目となるグラスラインまでの距離については、適用し
ない。
③【付記】を削除する。

解説
 まず、①の改正についてですが、改正前の下線部は『必要とする』と書かれていま
した。Official Baseball Rules (オフィシャル・ベースボール・ルールス=以下、OBR)
の原文では『recommend』となっており、一般的な翻訳の通りに書き改めることとし
ました。
次に、②の改正ですが、これは昨年のOBRの改正項目をそのまま追加したもので
あり、内野と外野のグラスライン(境界線)を投手板の中心から半径95フィート
(28.955 メートル)の距離とし、その許容範囲も示した主旨の内容です。これは、後
記する(5) 5.02 (c)の改正とリンクするものです。
最後に③の改正は、記述されている内容がいずれもMLBのレギュレーションであ
り実態に即していないことや、本文(規則2.01)で外野までの距離について示されて
いることから、削除することとしました。

(2) 2.03 塁に関する改正
2.03 の最終段落を次のように改め(下線部を改正)、【注】を追加する。
キャンバスバッグはその中に柔らかい材料を詰めて作り、その大きさは18インチ
(45.7 センチ)平方、厚さは3インチ(7.6センチ)ないし5インチ(12.7センチ)
である。
【注】我が国では、一塁、二塁、三塁のキャンバスバッグの大きさは15インチ
(38.1 センチ)平方とする。

解説
 昨年のOBRに関する大きな改正内容の一つであり、一塁、二塁、三塁のべースサ
イズの大きさ(縦と横の長さ)が従来の15インチ(38.1センチ)平方から18インチ
(45.7 センチ)平方に拡大されたものです。
これにより、野手と走者の塁上における接触機会が少なくなり、選手のケガの防止
が図られることや、攻擊側に有利な展開となる確率が増えることで、ベースボールが
より面白くなることなどが期待されています。
 ただ、日本においてベースサイズを変更することは、球場設備の管理上、物理的に
困難であるため、その後に記載された【注】として、我が国では従来通りのベースサ
イズで運用することとしました。

(3) 2.05 ベンチに関する改正
2.05 の「各ベースラインから最短25フィート(7.62 メートル)離れた場所に、」
を削除する。

解説
ベンチの設置場所について、具体的な位置が書かれた内容は、実際に使用している
球場、グラウンドにおいて実態にそぐわないことから、上記の文言を削除することと
しました。

(4) 3.02 バットに関する改正
3.02 (a)【注 3】および同【軟式注】を削除する。

解説
この改正は、2024年度より日本高等学校野球連盟で使用できる金属製バットの基準
が変更されることに伴い、従来の【注3】で示した規定を採用する団体が実質、存在
しなくなるため、【注3】および、その後の【軟式注】を削除することにしたもので
す。

(5) 5.02 守備位置に関する改正
5.02 (c)【注】を【注1】とし、その後に、以下の本文、【原注】、ペナルティ、【注
2】を追加する。
内野手の守備位置については、次のとおり規定する。
(ⅰ)投手が投手板に触れて、打者への投球動作および投球に関連する動作を開始
するとき、4人の内野手は、内野の境目より前に、両足を完全に置いていなければな
らない。
(ⅱ)投手が打者に対して投球するとき、4人の内野手のうち、2人ずつは二塁
ベースの両側に分かれて、両足を位置した側に置いていなければならない。
(iii)二塁ベースの両側に分かれた2人の内野手は、投手がそのイニングの先頭打者に初球を投じるときから、そのイニングが完了するまで、他方の側の位置に入れ替
わったり、移動したりできない。
 ただし、守備側のプレーヤーが交代したとき(投手のみの交代は除く)は、いずれ
の内野手も他方の側の位置に入れ替わったり、移動してもかまわない。
イニングの途中で内野手として正規に出場したプレーヤーは、その交代後に投手が
打者に投じるときから、そのイニングが完了するまで、他方の側の位置に入れ替わっ
たり、移動したりできない(そのイニングで、その後再び別の交代があった場合は除
く)。
【原注】審判員は、内野手の守備位置に関する本項の目的として、投手が投球する
前に打者がどこへ打つのかを予測して、二塁ベースのどちらかの側に3人以上の内野
手が位置するのを防ぐことであることに留意しなければならない。いずれかの野手が
本項を出し抜こうとしたと審判員が判断した場合、次のペナルテイが適用される。
ペナルティ 守備側チームが本項に違反した場合、投手の投球にはボールが宣告さ
れ、ボールデッドとなる。
ただし、打者が安打、失策、四球、死球、その他で―塁に達し、しかも他の全走者
が少なくとも1個の塁を進んだときには、規則違反とは関係なく、プレイは続けられ
る。もし、本項に違反した後に、他のプレイ(たとえば、犠牲フライ、犠牲バントな
ど)があった場合は、攻擊側の監督は、そのプレイが終わってからただちに、違反行
為に対するペナルティの代わりに、そのプレイを生かす旨を球審に通告することがで
きる。
【注2】我が国では、本項後段の内野手の守備位置については、適用しない。

解説
この改正も、昨年のOBRの大きな改正内容の一つであり、ベースサイズの改正と同様、内野手の守備位置に関する制限により、攻擊側の打率向上などを目的としたも
のとされています。
まず、本文5.02 (c)の冒頭にある、投手と捕手を除く各野手の守備位置について、
従来では『フェア地域ならば、どこに位置してもさしつかえない』という表記を以下
の通りに改めました。
『投手と捕手を除く各野手は、次に規定されたことを除いて、フェア地域ならば、
どこに位置してもさしつかえない。』 (下線部追加)
上記の本文直後に従来の【注】がそのまま続くことになりますが、本項に新たな
【注】が追加されるため、この【注】を【注1】としました。
本項の改正に関する内容については、上記に示された通りです。4人の内野手は投
手が打者に投球する前には、前記の改正(1)に示された『内野の境目』より前に位
置していなければならないとともに、4人の内野手のうち、2人ずつは二塁ベースの
両側に分かれる必要がある主旨となっています(サード、ショートは二塁ベースの左
側、セカンド、ファーストは二塁ベースの右側に位置する)。
そして、そのポジションは投手がそのイニングの先頭打者への初球からそのイニングの完了まで、反対側の位置に入れ替わることや、移動することは原則として認められないとしています。
併せて、追加された【原注】として、上記本文の追加内容にあたっての審判員における留意事項が示されました。
本項に違反した場合のペナルティも明記され、違反した場合には、その投球に対して『ボール』が宣告され、ボールデッドとなってボールカウントが1つ課せられることになります。
ただし、その投球を打者が打ったりして、プレイが続けられた場合には、ボークや打擊妨害が発生したときと同様の対処をすることとなります。
なお、その後の【注2】で記載した通り、我が国ではこの内野手に関する守備位置制限の規定を適用しないこととしています。

(6) 5.10 (k)プレーヤーの交代に関する改正
5.10 (k)後段を次のように改める。
プレ—ヤー、監督、コーチ、トレーナーおよび試合中にベンチやブルペンに入ることを許されたクラブ関係者は、実際に競技にたずさわっているか、競技に出る準備をしているか、その他許される理由以外で、競技場に出ることはできない。

解説
5.10 (k)の前段には、プレーヤーおよび控えのプレーヤーについて、実際に競技にた
ずさわっているか、競技に出る準備をしているか、一・三塁のべースコーチに出てい
る場合を除いて、チームのベンチに入っていなければならない旨の規定が示されてい
ます。
この改正は、それ以外のチーム関係者についても試合中は同様に、不要に競技場へ出ることは認めない旨の内容が追加、整理されたものです。
また、この規則に該当する対象者の表現が変更され、従来記載されていたバットボーイが削除され、クラブ関係者が新たに追加されました。クラブ関係者とは、通訳、広報、マネジャー、用具係などが挙げられます。

(7) 7.01 正式試合に関する改正
7.01(b)の見出しを「延長回」とし、次のように改める。
① 本文を同(1)とし、従来の(1)、(2)を(A)、( B)とする。
② 同(2)および【注】を追加する。
(2) 9 回が完了した後、10回以降は、走者二塁から、次のとおり始めることとする。
(A) 10回以降の延長回の先頭打者(またはその打者の代打者)は、前の回からの継続打順とする。
(B) 延長回における二塁走者は、その回の先頭打者の前の打順のプレーヤー(またはそのプレーヤーの代走者)とする。
たとえば、10回の先頭打者が5番打者であれば、4番打者(またはその代走者)が二塁走者となる。ただし、先頭打者の前の打順のプレーヤーが投手であれば、その投手の前の打順のプレーヤーが代わりに二塁走者を務めることができる。
交代して退いた打者および走者は、規定5.10により、再び試合に出場することはできない。
(C) 投手の自責点を規則9.16により決定するために、延長回を開始するときの二塁走者は守備の失策により二塁に到達したようにみなされるが、チームまたはプレーヤーに失策は記録されない。公式記録員は、延長回における打者および二塁走者についても、規則9.02により記録をする。
(D) 延長回が始まるたびに、球審は二塁走者が適正であるかを確かめるため、攻撃側チームの打順表を確認する。もし、その走者が適正でなければ、球審はただちに攻撃側チームの監督に知らせて、適正な二塁走者にさせる必要がある。また、プレイが開始された後に、審判員またはいずれかの監督が、走者が適正でないことに気付けば、その走者は適正な走者と入れ替わらなければならず、打順の誤りに起因したことによ、プレイを無効としない限りは、すべてのプレイは正規なものとなる。得点する前後に関係なく適正でない走者に対するペナルティはない。
【注】我が国では、所属する団体の規定に従う。

解説
上記の②は、昨年のOBRの大きな改正の一つとなります。9回が完了して同点で決着がつかなかった場合、延長回となる10回以降は、ノーアウト、走者二塁、継続打順とする試合進行方式が新たに規定されました。また、(C)は公式記録に関する対応、(D)は審判員に対する留意事項が書かれています。
この延長回に関する規定においても、すでに各所属団体において特別規程などで運用されていることから、【注】として、我が国では所属する団体の規定に従うこととしました。

(8) 8.04 審利員の報告義務に関する改正
8.04 (a)の(試合終了後)「12時間以内」、(b)前段の「4時間以内に」、(c)前段の
(その所属クラブ)「の代表者」、(c)後段の「通告後5日以内に、」を削除する。

解説
試合の際に規則違反などのトラブルや報告すべき事項が発生した場合、担当した審判員がその団体組織にその旨を報告する義務がある内容が書かれていますが、この改正によって、本文中の各項に記載されている報告の期限や処分の通知、対応期限を設けないこととなりました。

(9)定義46 に関する改正
定義46 「リーグプレジデント」(リーグ会長)を削除し、以下繰り上げる。

解説
すでに、OBRでは一昨年の段階で本定義については削除されており、『LEAGUE
PRESIDENT』に代わる表記『the office of the commissioner』の翻訳について検討
を行ってきたところです。今後は公認野球規則書内に記載されていた「リーグ会長」
に代わる表現として、「リーグ事務局」とすることとしました。
以上、2024年度の規則改正のポイントを解説しました。

くり返しになりますが、本改正のほとんどは、『我が国では適用しない』もしくは
『各所属団体の規定に従う』ことになります。運用における取り扱いには、くれぐれ
も留意いただくよう、お願いいたします。

2024 年度高校野球特別規則改正
無走者での“二段モーシヨン”が解禁に
日本高等学校野球連盟
日本高等学校野球連盟(日本高野連)は、2024年度の高校野球特別規則の変更を発
表しました。
昨年度からの変更点は、以下の3点となります。
① 『1.高校野球で使用できるバット』の改正
「金属製バットは、2024年シーズンインから2022年2月18日に定めた新基準に
よるものとし、一般財団法人製品安全協会の定めたSG基準に適合した、S Gマーク
添付の製品に限る」とされ、公式戦での使用は新基準バット(グリップ部にRを表示)のみ使用できることとなりました。
② 『15. タイムの制限』の一部追加
「内野手(捕手を含む)が投手のもとへ行ける回数を、1イニングにつき1回1人
だけとする」が(1)として追加され、それに伴い、従来の規則がくり下げられまし
た。
この改正は、1月31日付で日本高野連審判規則委員会から通知されたときの内容が
2 月22日付で変更されており、「投手が交代したときは、この限りではなく、投手の
もとへ行った回数には数えない」ものとして運用されることになりました。
また、「伝令が投手のもとに行ったときは内野手(捕手を含む)が投手のもとへ行った回数に数えない」「タイブレークに入った場合も同様とする」となっています。
③ 『27.投手の投球姿勢』『28.反則投球の取り扱い』の削除
2018 年度の公認野球規則改正では、国際的な基準に合わせて、反則投球の定義38
に関する【注】が削除され、5.07 (a)1)および2)に定められた投球動作に違反して投
球してもペナルティを課すことがなくなりました(走者がいないときのいわゆる“二
段モーションン”に対してペナルティは課さないとするための処置)。
2020 年度の同改正では、日本野球科学研究会の研究報告から、投手の変則足上げモーションによる打者のパフォーマンスに影響はないこと、投手への影響も実質的になく、投手障害の危険性もないことの結果報告を踏まえ、「投球動作をスムーズに行
わずに、ことさらに段階をつけるモーションをしたり、手足をぶらぶらさせて投球す
ること」という文言が削除されました。しかしながら、技術的な面においても、マナ
一の面においても“二段モーション”は望ましい投球フォームではない、という考え
方に変更はないと強調をされています。あわせて、走者がいる場合において投球動作
が一時停止した場合には、打者に投球しても、塁への送球にしても“ボーク”となる
のは従来通りです。
当初、高校野球は裾野が広く、また、主大会がトーナメン卜方式であり、打者が初
めて対戦する投手が多いとの理由から、投球姿勢に制限を設けられていました。しか
しながら、
相応の期間が経過したことに加え、昨今のテクノロジーの進化で、大学・社会人・
プロをはじめとした他の上位カテゴリ一の投手の投球フオームを参考にする投手が増
えていることで、高校野球においても今年度から、投手の投球姿勢を公認野球規則通
りとし、それにより、走者のいないときの“二段モーシヨン”が解禁になるというこ
とです。
なお、前記、高校野球特別規27削除にともない、高校野球特別規則28 (1)は削除と
し、同(2)(3)は規則定義38と重複することから表記を削除することとされました。