5.10 プレーヤーの交代

<5.10 第3版解説 ダブルスイッチ(2015年追加)>
<5.10 第3版解説 投手の守備位置の変更>
<5.10 第3版解説 コーティシーランナー(臨時代走)>
<5.10 第3版解説 先発投手および救援投手の義務>
<5.10 第3版解説 交代発表のなかったプレーヤーの取扱い>
<5.10 第3版解説 ネクスト・バッタースボックス(“On-Deck Circle”)>
<5.10 第3版解説 ダッグアウトから出てはいけない>
<5.10 第3版解説 いったん試合から退いたプレーヤーの再出場>

ℓ マウンドに行く回数
<5.10ℓ 第3版解説 マウンドに行く回数>

 

5.10 プレーヤーの交代

(a)〈3.03〉プレーヤーの交代は、試合中ボールデッドのときなら、いつでも許される。代わって出場したプレーヤーは、そのチームの打撃順に従って、退いたプレーヤーの順番を受け継いで打つ。

(b)〈3.06〉監督は、プレーヤーの交代があった場合には、ただちにその旨を球審に通告し、あわせて打撃順のどこに入るかを明示しなければならない。

【原注】守備側チームのプレーヤーが2人以上同時に代わって出場したときは、その代わって出場したプレーヤーが守備位置につく前に、監督はただちにそのプレーヤーの打撃順を球審に示し、球審はこれを公式記録員に通告する。

この通告がなかったときは、球審は、代わって出場したプレーヤーの打撃順を指定する権限を持つ。

ダブルスイッチ(投手交代と同時に野手も交代させて、打撃順を入れ替える)の場合、監督はファウルラインを越える前に、まず球審に複数の交代と入れ替わる打撃順を通告しなければならない。監督またはコーチがファウルラインを越えたら、それ以後ダブルスイッチはできない。

試合から退いたプレーヤーは、ベンチに入って、そのチームとともに残ることはできる。また、投手のウォームアップの相手をすることもできる。プレーヤー兼監督が控えのプレーヤーと代わって退いた場合、ベンチまたはコーチスボックスから指揮を続けることはできる。

審判員は、試合から退いてベンチに残ることを許されたプレーヤーが相手チームのプレーヤー、監督または審判員に対して、やじをとばすことは許さない。

【注】我が国では、本項〔原注〕の〝ダブルスイッチ〟以下の段については、所属する団体の規定に従う。

(c)〈3.07〉交代通告を受けた球審は、ただちにその旨を自ら発表するか、または発表させる義務がある。

(d)〈3.03〉いったん試合から退いたプレーヤーは、その試合に再出場することはできない。すでに試合から退いたプレーヤーが、何らかの形で、試合に再出場しようとしたり、または再出場した場合、球審はその不正に気付くか、または他の審判員あるいはいずれかのチームの監督に指摘されたら、ただちに当該プレーヤーを試合から除くよう監督に指示しなければならない。その指示がプレイの開始前になされたときは、退いたプレーヤーに代わって出場しているべきプレーヤーの出場は認められる。しかし、その指示がプレイの開始後になされたときは、すでに試合から退いているプレーヤーを試合から除くと同時に、退いたプレーヤーに代わって出場しているべきプレーヤーも試合から退いたものとみなされ、試合に出場することはできない。プレーヤー兼監督に限って、控えのプレーヤーと代わってラインアップから退いても、それ以後コーチスボックスに出て指揮することは許される。

守備側チームのプレーヤーが2人以上同時に交代する場合、監督はその代わって出場したプレーヤーが守備位置につく前に、速やかにそれぞれの打撃順に示し、球審はこれを公式記録員に通告しなければならない。

球審にただちに通知がなされなかったときは、球審が代わって出場したプレーヤーの打撃順を指定する権限を持つ。

【原注】同一イニングでは、投手が一度ある守備位置についたら、再び投手となる以外他の守備位置に移ることはできないし、投手に戻ってから投手域外の守備位置に移ることもできない。

投手以外の負傷退場した野手に代わって出場したプレーヤーには、5球を限度としてウォームアップが許される。(投手については、5.07bに規定がある)

すでに試合から退いているプレーヤーが試合に出場中に起こったプレイは、いずれも有効である。プレーヤーが試合から退いたことを知っていながら再出場したと審判員が判断すれば、審判員は監督を退場させることができる。

【注】アマチュア野球では、試合から退いたプレーヤーが、ベースコーチとなることを認めることもある。

(e)〈3.04〉打順表に記載されているプレーヤーは、他のプレーヤーの代走をすることは許されない。

【原注】この規則は〝コーティシーランナー〟(相手の好意で適宜に許される代走者)の禁止を意味している。試合に出場しているプレーヤーは、他のプレーヤーのために、コーティシーランナーになることを許されず、いったん試合から退いたプレーヤーも同様である。打順表に記載されていないプレーヤーでも、一度走者として出たならば、代わって出場したプレーヤーと同様にみなす。

(f)<3.05a〉4.03(a)、同(b)の手続きによって球審に手渡された打順表に記載されている投手は、第1打者またはその代打者がアウトになるかあるいは一塁に達するまで、投球する義務がある。ただし、その投手が負傷または病気のために、投球が不可能になったと球審が認めた場合を除く。

(g)〈3.05b〉ある投手に代わって救援に出た投手は、そのときの打者または代打者がアウトになるか一塁に達するか、あるいは攻守交代になるまで、投球する義務がある。ただし、その投手が負傷または病気のために、それ以後投手としての競技続行が不可能になったと球審が認めた場合を除く。

(h)〈3.05c〉規則で代わることが許されていない投手に代わって他のプレーヤーが出場した場合には、審判員は、規則を正しく適用するために、正規の投手に試合に戻ることを命じなければならない。

万一、誤って出場した投手が、指摘されないまま打者へ1球を投げるか、または塁上の走者がアウトになった場合には、その投手は正当化されて、以後のプレイはすべて有効となる。

【原注】監督が規則に違反して投手を退かせようとしたときには、審判員はその監督に不可能である旨を通告しなければならない。たまたま、球審が看過して規則で許されていない投手の出場を発表してしまった場合でも、その投手が投球する前なら正しい状態に戻すことができる。万一、誤って出場した投手が1球を投じてしまえば、その投手は正規の投手となる。

(i)〈3.05d〉すでに試合に出場している投手がイニングの初めにファウルラインを越えてしまえば、その投手は、第1打者がアウトになるかあるいは一塁に達するまで、投球する義務がある。ただし、その打者に代打者が出た場合、またはその投手が負傷または病気のために、投球が不可能になったと球審が認めた場合を除く。

また、投手が塁上にいるとき、または投手の打席で前のイニングが終了して、投手がダッグアウトに戻らずにマウンドに向かった場合は、その投手は、準備投球のために投手板を踏まない限り、そのイニングの第1打者に投球する義務はない。

(j)〈3.08〉交代発表のなかったプレーヤーの取り扱い

代わって出場したプレーヤーは、たとえその発表がなくても、次のときから、試合に出場したものとみなされる。

(1) 投手ならば、投手板上に位置したとき。

(2) 打者ならば、バッタースボックスに位置したとき。

(3) 野手ならば、退いた野手の普通の守備位置についてプレイが始まったとき。

(4) 走者ならば、退いた走者が占有していた塁に立ったとき。

本項で出場したものと認められたプレーヤーが行なったプレイ、およびそのプレーヤーに対して行なわれたプレイは、すべて正規のものとなる。

(k)〈3.17〉両チームのプレーヤーおよび控えのプレーヤーは、実際に競技にたずさわっているか、競技に出る準備をしているか、あるいは一塁または三塁のベースコーチに出ている場合を除いて、そのチームのベンチに入っていなければならない。

試合中は、プレーヤー、控えのプレーヤー、監督、コーチ、トレーナー、バットボーイのほかは、いかなる人もベンチに入ることは許されない。

ペナルティ 本項に違反したときは、審判員は、警告を発した後、その反則者を競技場から除くことができる。

【注1】次打者席には、次打者またはその代打者以外入ってはならない。

【注2】ベンチあるいはダッグアウトに入ることのできる者に関しては、プロ野球では各リーグの規約によって定め、アマチュア野球では協会、連盟ならびに大会などの規約に基づいて定めている。

(l)〈8.06〉マウンドに行く回数

プロフェッショナルリーグは、監督またはコーチが投手のもとへ行くことに関して、次の規則を適用しなければならない。

(1) この項は、監督またはコーチが、1イニングに同一投手のもとへ行ける回数を制限する規則である。

(2) 監督またはコーチが、1イニングに同一投手のもとへ2度目に行けば、その投手は自動的に試合から退かなければならない。

(3) 監督またはコーチは、そのときの打者が打撃を続けている限り、再びその投手のもとへ行くことはできない。

(4) 攻撃側がその打者に代打者を出した場合には、監督またはコーチは再びその投手のもとへ行ってもよいが、その投手は試合から退かなければならない。

監督またはコーチが投手のもとへ行った後、投手板を囲んでいる18㌳の円い場所を離れたら、1度行ったことになる。

【5.10l原注】監督(またはコーチ)が、捕手または内野手のところへ行き、その野手がそのままマウンドに行ったり、投手が、守備位置にいるその野手のところへ行ったときは、監督(またはコーチ)がマウンドに行ったものと同様に扱われる。ただし、1球が投じられた後、またはプレイが行なわれた後は、この限りではない。

監督(またはコーチ)が、捕手または内野手のところへ行き、その野手が投手と相談するためにマウンドに行って、規則の適用をのがれようとしたり、規則を出し抜こうとするいかなる企ても、すべてマウンドへ行った回数に数えられる。

コーチがマウンドに行って投手を退け、新しく出てきた投手に指示を与えるために監督がマウンドに行ったときは、そのイニングで新しい投手のもとへ1度行ったことになる。

監督がすでに1度投手のもとへ行っているので、同一イニングで同一投手へ、同一打者のときには、もう1度行くことはできないと審判員が警告したにもかかわらず、監督が行った場合、その監督は試合から除かれ、投手はただちに退かないでその打者がアウトになるか、走者になるまで投球し、その義務を果たした後に試合から退かなければならない。この場合、監督は、その投手は1人の打者に投球したら交代しなければならないのだから、リリーフ投手にウォームアップさせておかねばならない。リリーフ投手は、審判員の適宜な判断において、8球またはそれ以上の準備投球が許される。

投手が負傷を受けたとき、監督がその投手のもとへ行きたいときには、審判員にその許可を要請することができる。許可があれば、マウンドに行く回数には数えられない。

【注1】我が国では本項にある〝投手板を囲んでいる18㌳の円い場所〟を〝ファウルライン〟と置きかえて適用する。

【注2】監督(またはコーチ)が投手のもとへ行った後、ファウルラインを越えて引き上げたら、その投手は、そのときの打者がアウトになるか、走者になるか、または攻守交代になるまで投球した後でなければ退くことはできない。ただし、その打者に代打者が出た場合は、この限りではない。

【注3】監督(またはコーチ)が投手のもとへ行った回数を数えるにあたって、イニングの途中で投手交代の通告が行なわれた後、プレイが再開されるまでに新しく出てきた投手のもとへ監督(またはコーチ)が行った場合、監督(またはコーチ)がマウンドに行って投手を退け、そのままとどまって新しく出てきた投手に指示を与えて引き上げた場合、いずれも1度とは数えないが、次の場合は、いずれも監督(またはコーチ)が投手のもとへ行った回数として数える。

① 監督(またはコーチ)がファウルライン近くまできて投手に指示を与えた場合。

ただし、ファウルライン近くまできたが、投手に指示を与えることもなくそのまま思い直して引き返した場合を除く。

② 投手の方からファウルラインを越えて、監督(またはコーチ)の指示を受けた場合。

③ コーチがマウンドに行って投手を退け、ファウル地域まで戻ってきて監督と打ち合わせてから、新しく出てきた投手のもとへ行った場合。

【注4】コーチ(または監督)が、マウンドに行って投手を退け、新しく出てきた救援投手に指示を与えるために監督(またはコーチ)がマウンドに行った後、そのときの打者に代打者が出されたとき、監督(またはコーチ)が再びその投手のもとへ行くことは許されるが、その投手はただちに試合から退くことはできず、その代打者がアウトになるか、走者になるか、攻守交代になるまで投球した後に、退かなければならない。

【注5】アマチュア野球では、本項については、各連盟の規定を適用する。

第3版解説 ダブルスイッチ(2015年追加) より>

「ダブルスイッチ(投手交代と同時に野手も交代させて、投手を含めて打撃順を入れ替えること)の場合、監督はファウルラインを越える前に、まず球審に複数の交代と入れ替わる打撃順を通告しなければならない。監督またはコーチがファウルラインを越えたら、それ以後ダブルスイッチはできない」との規定が2015年度の規則改正で3.06[原注](現行5.10(b)[原注])に追加になった。

それは監督がマウンドに行ってから選手交代を考えたり、球審に告げたりすると、球審はその確認に時間はかかるし、混乱も生じるから、それを避ける意味で球審に告げてからマウンドに行きなさいとした。

[注]我が国では、所属する団体の規定に従う。

第3版解説 投手の守備位置の変更 より>

投手は同一イニングで一度だけ投手以外の守備位置に変わることができる(5.10(d)参照)。つまり、投手が他の守備位置に移り、その後同一イニングで投手に戻ることはできるが、そのイニングに再びマウンドを離れることはできない(もちろん、試合から退く場合は別)。もし同一インニングで投手がマウンドに戻った場合、その投手は通常どおり8球の準備投球が許される。

もっともこの規定は、同一イニングで投手が投手以外の守備位置に2度以上つくことを禁じているだけで、イニングがちがえば何度でもほかの守備位置と投手板を往復できることはいうまでもない。

高校野球では、特別規則で、投手→野手→野手→投手および投手→野手→野手を認めている。(高校野球特別規則9.)

軟式野球では競技に関する連盟特別規則(各大会共通)2で、守備位置の変更ができる例として、投手一野手一野手一投手、投手一野手一投手一野手を表示している。

第3版解説 コーティシーランナー(臨時代走) より>

規則5.10(e)には、「打順表に記載されているプレーヤーは、他のプレーヤーの代走をすることは許されない。」と規定され、さらに同[原注]には、「この規則は“コーティシーランナー”(相手の行為で適宜に許される代走者)の禁止を意味している。」とある。

米国の1876年のルールでは、「いかなるプレーヤーも、各塁を走るときに補欠(交代要員)を使うことは許されない。ただし、病気または負傷の場合は除く。このような場合には、相手チームの主将が補欠(交代要員)として走るべき者を選ぶこととする。」とあり、それが1949年には、「走者は打順に記載してある他のプレーヤーに代走してもらうことはできない。ただし、相手チームの監督または主将の承諾があればこの限りでない。[原注]もし守備側チームの主将が、一塁に到達した打者の代わりに走る他のプレーヤーを指名し、攻撃側チームが守備に回ったときに、その打者が再び守備につくことを認めたならば、何人も異議をさしはさむことはできない。」と変わった。

この[原注]から判断すると、コーティシーランナーの指名権は、相手チームの主将(または監督)にあったわけで、主将の気持ち次第でどうにでもなったと言える。そこにはフェアプレイの精神が働いたのだろう。そして、1950年には、ただし書きが消え、現在のような条文となった。

わが国の高校野球、一部の大学野球および軟式野球では、プレーヤーが試合中に負傷して大事をとったり、治療するためにダッグアウトにさがり、そのため試合の中断が長引くと判断された場合、プレーヤーの身体の安全を第一に、そして試合進行を考慮して、この臨時代走(あるいは特別代走)を認めている。

高校野球の特別規則11.は、次のようになっている。

試合中、攻撃側選手に不慮の事故などが起き、一時走者を代えないと試合の中断が長引くと審判員が判断したときは、相手チームに事情を説明し、臨時の代走者を許可することができる。この代走者は試合に出場している選手に限られ、チームに指名権はない。

●臨時代走はその代走者がアウトになるか、得点するか、またはイニングが終了するまで継続する。

●臨時代走者に替えて別の代走を送ることはできる。この場合、負傷した選手に代走が起用されたことになり、負傷選手は以後出場できない。

(1) 打者が死球などで負傷した場合

投手を除いた選手のうち、打撃を完了した直後の者とする。

(2) 塁上の走者が負傷した場合

投手を除いた選手のうち、その時の打者を除く打撃を完了した直後の者とする。

(参考)臨時代走者の記録上の取り扱いは、盗塁、得点、残塁などすべてもとの走者の記録と扱われる。

ここで注意が必要なのは、臨時代走者に代走を送ることはできるが、その場合には、負傷した選手に代走が起用されたことになり、負傷した選手は、試合に戻ろうとしてももはやそれはできなくなるという点である。

また、全日本軟式野球連盟の競技に関する連盟特別規則(各大会共通)4では、次のようになっている。

4  試合に出ているプレーヤーの代走が認められる場合(臨時代走者)

審判員は(追加)スピード化を図るため、プレーヤーが負傷などで治療が長引く場合は、相手チームに伝え、試合に出ている9人の中から代走(打順の前位の者、ただし投手および捕手を除く)を認めて試合を進行させる。(規則5.01e【原注】関連)

<第3版解説 先発投手および救援投手の義務 より>

規則5.10の中に先発および救援投手の義務が記載されている。

(f)先発投手は、第1打者またはその代打者がアウトになるかあるいは一塁に達するまで、投球する義務がある。

(g)ある投手に代わって救援に出た投手は、そのときの打者または代打者がアウトになるか一塁に達するか、あるいは攻守交代になるまで、投球する義務がある。

(h)規則で代わることが許されていない投手に代わって他のプレーヤーが出場した場合には、審判員は本条を正しく適用するために、正規の投手に試合に戻ることを命じなければならない。万一、誤って出場した投手が、指摘されないまま打者へ1球を投げるか、または塁上の走者がアウトになった場合には、その投手は正当化されて、以後のプレイはすべて有効となる。(5.10(f)(g)(h))

上記(h)で、「塁上の走者がアウトになった場合には」、とあるが、ではけん制をして走者がアウトにならなかった場合、あるいはけん制球が悪送球になった場合は、どのように考えたらいいのか。この場合、その投手は正当化されずに、正規の投手に戻るよう命じるのかといった疑問が生じる。

―――「打者へ1球を投げるか、または塁上の走者がアウトになった場合」とは、「打者へ1球を投げるか、または投球しなくても、その前に投手が塁上の走者にプレイをしたり(アウト、セーフに関係ない)、プレイを企てた場合」と解釈する。

監督が本項に違反して投手を退かせようとしたときには、審判員はその監督に不可能である旨を通告しなければならない。たまたま、球審が見過ごして規則で許されていない投手の出場を発表してしまった場合でも、その投手が投球する前なら正しい状態に戻すことができる。万一、誤って出場した投手が1球を投じてしまえば、その投手は正規の投手となる。(5.10(h)[原注])

2013年、新たに規則5.10(i)として、「すでに試合に出場している投手がイニングの初めにファウルラインを越えてしまえば、その投手は、第1打者がアウトになるかあるいは一塁に達するまで、投球する義務がある。ただし、その打者に代打者が出た場合、またはその投手が負傷または病気のために、投球が不可能になったと球審が認めた場合を除く。」が追加された。

これはいうまでもなく、投手がマウンドに行ってから監督がやおら出てきて投手交代をするとなると、意図的に時間稼ぎができて、試合の進行の遅延を招くことになるので、それを防止するために、投手がファウルラインを越えてしまえばもうその投手はその回の先頭打者に対して投球する義務があるとしたわけである。

では、投手が塁上にいてチェンジになったり、投手が打者でアウトになってチェンジになった場合などは、どうなるのかという疑問が生じる。このように、すでに投手はファウルラインを越えて、ダイヤモンドの中にいる場合でも、先頭打者への投球義務はあるのだろうか?

当然のことながら生じたこの疑問を解決するために、2014年の規則改正で、「投手が塁上にいるときまたは投手の打席で前のイニングが終了して、投手がダッグアウトに戻らずにマウンドに向かった場合は、その投手は、準備投球のために投手板を踏まない限り、そのイニングの第1打者に投球する義務はない。」との条文が追加された。

<第3版解説 交代発表のなかったプレーヤーの取扱い より>

代わって出場したプレーヤーは、たとえその発表がなくても、次のときから、試合に出場したものとみなされる。(5.10(j))

(1) 投手ならば、投手板上に位置したとき。

(2) 打者ならば、バッタースボックスに位置したとき。

(3) 野手ならば、退いた野手の普通の守備位置についてプレイが始まったとき。

(4) 走者ならば、退いた走者が占有していた塁に立ったとき。

「プレイが始まったとき」とは、ボールデッドの状態のときは、“プレイ”がかかったとき、またボールインプレイの状態のときは、まさに次のプレイが始まったときと解釈する。

上記で出場したものと認められたプレーヤーが行ったプレイ、およびそのプレーヤーに対して行われたプレイは、すべて正規のものとなる。

規則5.10(j)(3)では、「野手ならば、退いた野手の普通の守備位置についてプレイが始まったとき」に交代発表のなかったプレーヤーは出場したものとみなすと規定されている。

こんなことがあった。1979年大リーグニューヨーク・ヤンキースとデトロイト・タイガースの試合途中、攻守交代のときにヤンキースのクリス・シャンブリス一塁手が“用具の修理”のためロッカールームに引っ込んでいる間に、ルウ・ピネラがダッグアウトから駆け出してきて一塁手を務め内野手を相手に守備練習をしていた。プレイ再開になる前にシャンブリスが戻ってきて一塁の守備について、球審が“プレイ”を宣したが、タイガースのスパーキン・アンダーソン監督が「ピネラが引っ込んだシャンブリスの守備位置についたと同時にピネラが自動的に新しく出場した一塁手になるはずだ」と抗議した。球審はこの抗議を認めなかったが、翌1980年にルールブックに「プレイが始まったとき」という語句が追加されることになった。

<第3版解説 ネクスト・バッタースボックス(“On-Deck Circle”) より>

次打者は、ネクスト・バッタースサークルで待機しなければならない。これは試合進行上、次打者を待機させるものであって、次打者以外のプレーヤーがネクスト・バッタースサークルに入り、待機することは認められないし、攻撃中に、打者、走者、次打者およびベースコーチ以外の者はグラウンドに出ることはできない。(5.10(k))

なお、ネクスト・バッタースサークルにマスコットバット等次打者が持ち込めるものについては各団体・連盟の規定による。

<第3版解説 ダッグアウトから出てはいけない より>

両チームのプレーヤーおよび控えのプレーヤーは、実際に競技にたずさわっているか、競技に出る準備をしているか、あるいは一塁または三塁のベースコーチに出ている場合を除いて、そのチームのベンチに入っていなければならない。

試合中は、プレーヤー、控えのプレーヤー、監督、コーチ、トレーナー、バットボーイのほかは、いかなる人もベンチに入ることはできない。(5.10(k))

「競技に出る準備をしている」プレーヤーとは、たとえばブルペンが競技場内にある場合に、ブルペンで投球練習をしているバッテリーとか、ブルペンで送球練習をしている野手とか、あるいは次打者席に入っている次打者をいう。

したがって、わが国で慣習として行われている、たとえばツーアウトになると投手がダッグアウトから出てきてダッグアウト横で投球練習をするとか、あるいは守備の交代に備えてダッグアウト横で送球練習をするといった光景は、実は規則違反ということになる。国際大会では、厳しく注意され、罰金をとられることもある。

こうしたことから、アマチュア野球規則委員会はプロ側とも協議して、東京オリンピックを2年後に控え、2018年2月に規則の厳格適用を目指すこととした通達を出した。本来なら、プロを含めた日本の野球界全体で一斉に実施したいところだが、ベンチ前のキャッチボールが長年の習慣として定着していることや、アマチュア野球のそれぞれの団体で使用する球場設備の問題等の諸事情を勘案して、実施時期は各団体に任せることにしたが、2020 年までの完全実施を目標にしている。 

2018 年のシーズンは、社会人野球と東京六大学野球において実施することが決まっている。

なお、アマチュア野球では、ベンチに入ることができる者に関して連盟ごとに取り決めがなされている。

<5.10 第3版解説 いったん試合から退いたプレーヤーの再出場>

2018年の改正により、5.10(d)の1段目が改正され(下線部を追加)、また、同[原注]の末尾に下線部のセンテンスが追加された。 

5.10(d):いったん試合から退いたプレーヤーは、その試合に再出場することはできない。すでに試合から退いたプレーヤーが、何らかの形で、試合に再出場しようとしたり、または再出場した場合、球審はその不正に気付くか、または他の審判員あるいはいずれかのチームの監督に指摘されたら、ただちに当該プレーヤーを試合から除くよう監督に指示しなければならない。その指示がプレイの開始前になされたときは、退いたプレーヤーに代わって出場しているべきプレーヤーの出場は認められる。しかし、その指示がプレイの開始後になされたときは、すでに試合から退いているプレーヤーを試合から除くと同時に、退いたプレーヤーに代わって出場しているべきプレーヤーも試合から退いたものとみなされ、試合に出場することはできない。プレーヤー兼監督に限って、 控えのプレーヤーと代わってラインアップから退いても、それ以後コーチスボックスに出て指揮することは許される。

5.10(d) [原注]:すでに試合から退いているプレーヤーが試合に出場中に起こったプレイは、いずれも有効である。プレーヤーが試合から退いたことを知っていながら再出場したと審判員が判断すれば、審判員は監督を退場させることができる。

この規則は、OBRでは2010年に追加された。日本野球規則委員会では2011年の規則改正の際に、この規則の採用について検討したが、この規則が分かりづらいこと(OBRの“substitute player”と“substituted-for player”の訳し方が難しい)、また、再出場は考えられないことなどから、改正を見送った経緯がある。しかし、アマチュア野球では過去に交代したプレーヤーが再出場して問題となったケースがあり、また、最近になって大学の公式戦で実際に起こったことから、「原文に忠実に」の方針から、2018年に我が国の規則書に追加することとされた。なお、“substitute player”を「退いたプレーヤーに代わって出場しているべきプレーヤー」、“substituted-for player”を「すでに試合から退いているプレーヤー」と訳した。

例1:5回の表、二塁手Aの打順にBが代打で出場し、内野ゴロを打って3 アウトになった。監督はBがそのまま二塁に入ると球審に告げたが、なぜかAが二塁の守備についていた。5回の裏、プレイが開始される前に塁審が気づき、球審に指摘した。

処置1:球審はAを試合から除き、Bの出場は認められる。 

例2:例1と同じ状況で、5回の裏、これにだれも気付かず、投手が1球(ス トライク)を投げた後に、相手チームが球審に指摘した。

処置2:球審はAを試合から除き、Bも退かせ、代わりの者を二塁につかせる。打者のカウントは1Sから再開される。  

例3:5回の表、二塁手Aの打順にBが代打で出場し、内野ゴロを打って3 アウトになり、Bがそのまま二塁の守備についた。9 回の裏、なぜかAが二塁の守備についたが、誰にも指摘されず投手が1球(ストライク) を投げた後、相手チームが球審に指摘した。

処置3:球審はAを試合から除き、Bも退かせ、代わりの者を二塁につかせる。それまでのプレイはすべて有効とされ、打者のカウントは1Sから再開される。

<第3版解説 マウンドに行く回数 より>

監督またはコーチが、同一イニングに同一投手のもとへ二度目に行けば、その投手は自動的に試合から除かれる。(5.10(ℓ)(2))

監督またはコーチが、そのときの打者が打撃を続けている限り、再びその投手のもとへ行くことはできない(同(3))。しかし、その打者に代打者が出たときは、監督またはコーチは再びマウンドに行ってもよいが、そのときはその投手は試合から退かねばならない。(同(4))

打者の打撃時間は、前位の打者がアウトになるか走者になった時点から始まる。

マウンドに行く回数は、監督またはコーチがファウルラインを越えたときに始まり、そして、投手板を囲む18フィートのサークルを離れたときに終わる。

注:わが国では、規則5.10(ℓ)にある“投手板を囲んでいる18フィートの円い場所”を“ファウルライン”と置き換えて適用している。([5.10(ℓ)原注][注1]参照)

監督またはコーチがひとたびファウルラインを越えて引き上げたら、その投手は、そのときの打者に投球を続けねばならない(または攻守交代する)。ただし代打者が出てきたときまたはつぎの状況のときはこの限りではない。([5.10(ℓ)原注][注2]参照)

(a) 監督またはコーチがマウンドに行っている間に(またはマウンドに行った後、同一打者がまだ打撃中に)試合がサスペンデッドになった場合、試合が再開したとき新しい投手に交代することができる。

(b) 監督またはコーチがマウンドに行っている間に(またはマウンドに行った後、同一打者がまだ攻撃中に)雨で試合進行が遅れた場合、雨で中断の後、試合が再開したとき、新しい投手に交代することができる。

監督またはコーチが、捕手または内野手のところへ行き、その後、その野手がマウンドに行ったり、投手が守備位置にいるその野手のところに行ったときは、監督またはコーチがマウンドに行ったものと同様に扱われる。ただし、プレイの介在(1球が投じられたり、他のプレイがあったり)の後は、この限りではない。

捕手または他の野手がダッグアウトまたは監督のところへ行き、その後、その野手がすぐマウンドに向かえば、それもマウンドに行った回数に含まれる。

投手が退けられ、監督またはコーチがその場に留まって、新しく出てきた投手に指示を与えることは、回数には数えない。

コーチがマウンドに行って投手を退け、そのとき監督が新しく出てきた投手に指示を与えるためにマウンドに行けば、そのイニングで新しい投手のもとへ一度行ったことになる。

監督が投手を代え、ファウルラインを越えた場合、監督(またはコーチ)は、同一打者が攻撃中に再度マウンドに行くことはできるが、そのイニングで新しい投手のもとへ一度行ったことになる。(5.10(ℓ)[原注])

監督と投手が同時に退場になった場合、コーチまたは監督代行は試合再開の前に新しく出てきた投手のところに行くことができる。それは1回に数えない。ただし退場になった監督がそれ以前に新しい投手と話し合いをしていないことが条件である。

たとえば、投手と監督が同時に退場となり、新しい投手が一人でマウンドに来た場合、コーチがダッグアウトを出て、新しい投手がウォームアップをしている間にマウンドに行くことはできる。それは1回に数えない。一方、退場になった監督が新しい投手がマウンドに来るまでマウンドに残った場合は、プレイ再開前にコーチが再びマウンドに行けばそれは新しい投手のもとへ1回行ったことになる。

審判員の判断で、本規則を出し抜こうとするいかなる企ても、すべてマウンドに行った回数に数えられる。

監督またはコーチが投手のもと(マウンド)に行く制限について

1 監督またはコーチがファウルラインを越えて投手のもと(マウンド)に行った場合は必ず1回に数えられる規則である。

ただし、投手交代の場合を除く。

2 イニングの途中で、監督またはコーチが投手のもとへ行き、投手交代をする場合:新しい投手がマウンドに到着し、その投手がウォームアップを始めたならば、その監督またはコーチはベンチに戻る。もし、そのまま(マウンドに)留まっていた場合には「一度」に数えられる。

3 新しいイニングの初めに監督またはコーチがマウンドに行った場合には、「一度」に数えられる。

4 球審(審判員)は、監督またはコーチに投手のもと(マウンド)へ行った回数を知らせる。

(2015年2月10日アマチュア野球規則委員会通達)

なお、イニングの初めに監督またはコーチがマウンドに行って新しく交代した投手を待ち(1回)、さらにその投手がウォームアップを始めてもマウンドに留まっていれば(1回)、2回となって、5.10(ℓ)(2)に抵触し、その投手は自動的に試合から退くことになってしまう。これでは、まだ1球も投げないうちに退くことになるので、この場合は、その打者がアウトになるか、走者になるまで投球し、その後に退くことになる。

審判員としては、これを看過せずに、投手のウォームアップが始まったら監督またはコーチにベンチに下がるよう注意し、そのままいたらさらに1回となりますよと警告を与えることが望ましい。

監督またはコーチがすでにマウンドに行き、その後、同一イニングに、同一打者のときに、同一投手のところへ二度目に行こうとした場合、審判員は行けないと警告する。もし監督またはコーチがこの警告を無視すれば、その監督またはコーチは試合から除かれ、投手はそのときの打者がアウトになるか、走者になる(または攻守交代になるか)まで投球し、その義務を果たした後に試合から退かねばならない。この場合、監督は、その投手は一人の打者に投球したら交代させられるので、交代の投手にウォームアップをさせておかねばならない。交代で出てきた投手は、審判員の判断で、場合によっては8球以上の準備投球をすることができる。

注:もし審判員が監督またはコーチヘの警告を見過ごしたり、しなかったため、監督またはコーチが同一打者(行くことはできないと警告を受けないまま)のとき、うっかりして再びマウンドに行けば、この投手は打者がアウトになるか、走者になる(または攻守交代になるか)まで投球し、その義務を果たした後に試合から退かねばならない。しかし、審判員が、監督またはコーチに、同一打者のとき再び投手のところへ行けないとの警告を怠ったことから、この場合は、監督またはコーチが試合から除かれることはない。監督またはコーチが警告を無視したときだけ退場が適用される。(5.10(ℓ)[原注])

投手が負傷または具合が悪くなったときは、監督は、審判員の許可を得て、投手のところへ行くことができる。このとき、球審が許可すればトレーナーも同行できる。この場合は回数に数えない。球審は監督またはコーチに同行し、その場に立ち会い、規則に違反していないことを確認する。相手チームの監督に、終わったら、これは一回には数えないことを知らせる。1回に数えるか、数えないかは、一に審判員の権限である。

監督兼選手の場合、どれが1回となるかは審判員の判断による。審判員は、監督兼選手および相手チームの監督に、マウンドに行く回数が数えられた都度、その旨知らせなければならない。

コーチ兼選手の場合、その特権の乱用がない限り、プレイ中は選手として扱われる。特権を利用したと審判員が判断すれば、コーチ兼選手および監督に、その後マウンドに行けば回数に数えられることを通告する。

社会人および大学野球では「社会人及び大学野球における試合のスピードアップに関する特別規則」を制定することで2015年2月3日に合意した。

8. 監督またはコーチが投手のもとに行った場合、審判員がタイムをかけてから45秒以内に打ち合わせを終了する。

9. 内野手(捕手を含む)が投手のもとへ行ける回数を、1イニングにつき1回1人だけとする。

監督またはコーチが投手のもとへ行ったときも1人の内野手だけ(この場合は捕手は 含まない)が投手のもとへ行くことが許され、そしてそれは内野手が投手のもとへ行った回数に数えられる。

なお、投手交代により新しく出てきた投手が準備投球を終えた後、捕手が投手のもとへ行っても、捕手が投手のもとへ行った回数には数えない。

なお、社会人および大学野球では、スピードアップルールとして、次のように攻撃側のタイムも制限している。

10. 1試合につき攻撃側の話し合いを3回まで認める。攻撃側の話し合いは、監督が打者、走者、打席に向かう次打者またはコーチと話し合うためにタイムをとって試合が遅れる場合にカウントされる。なお、延長回に入った場合は、それ以前の回数は関係なく、3イニングにつき、1回の話し合いが認められる。

ただし、攻撃側の責めに帰せないタイム中(例えば、守備側が投手のもとに集まっているとき、選手が負傷したとき、選手の交代のときなど)に話し合いを持っても、さらに試合を遅延させない限り、回数には数えない。

アマチュア野球では、所属する団体または連盟によって、スピードアップルールの取り決めがなされている。