2018公認野球規則はしがき

2018年1月に世界野球ソフ トボール連盟 (WBSC) が発表した最新の世界ランキングによると、 日本は前回に引き続き男女とも世界1位の座をキープしている。しかし、 昨年3月に行われた「2017WORLD BASEBALL CLASSIC脳」では、準決勝でメジャーリーガーをずらりと並べたアメ リカに敗れ2大会ぶりの王座奪回はかなわなかった。また「WBSC U-18ワールドカップ」でも、 アメリカや韓国に敗れ3位という結果に終わっている。ランキング1位の座のお尻に火がついたとまでは言わないが、安閑としていられない状況であることは間違いない。侍ジャパンのトップチームは新たに稲葉監督を迎え、昨年11月のア ジアプロ野球チャンピオンシップ2017で劇的な戦いの末優勝を勝ち取って順調なスタートを切った。トップチームの今後の活
躍には大いに期待したいところだ。

一方、国内においては野球競技者数の減少が止まらず、我が国の野球界にとって将来を憂慮される事態が続いている。学童野球や中学の軟式野球の競技者数は少子化の減少割合を大きく上回る減少を続けており、高野連でさえ2017年の部員数が6,000人以上の減少を見せ、新入部員も減少している。このような事態に対して、プロ野球では、OBによる少年向け講習会を開催したり、アマでは、幼児向けにティーボール教室を企画したりして、将来の野球界を背負う世代に野球というスポーツに触れてもらう試みを続けている。また、一昨年5月に発足した日本野球協議会においては、普及振興委員会を中心に野球の普及のためのさまざまな施策が検討されている。

未来を担う子どもたちに野球に興味をもってもらうために、まず必要なことは、野球という競技が、ボールを打って走って得点を奪い合う、爽快でスリリングな楽しいスポーツであることを分かってもらうことではなかろうか。昭和30年代の子ども たちが長嶋選手に憧れて、稲刈りの終わった田んぼで夢中でボールを追いかけたころの再現は難しいかもしれないが、それに近い気持ちを現代の子どもたちにも持ってもらえるような環境づくりも大きな課題であろう。

2年後には、東京オリンピックが迫っている。オリンピックでメダルが取れないような競技、ましてや採用されないような競技は子どもたちに見向きもされないだろう。2020東京での野球競技を成功させ、その後もオリンピック競技として存続させて世界の野球振興に寄与することが日本の野球界に携わる者の使命である。

さて、今年度の規則改正であるが、いわゆる“二段モーション”を反則投球とする、我が国が独自に定めた、定義38の【注】を削除することとした。国際的な基準に合わせて、走者のいないときの“二段モーション“に対してはペナルティを課さないと
するための措置であるが、技術的な面においても、マナーの面においても“二段モーション”は望ましい投球フォームではないという考え方に変更はないことは強調しておきたい。また、昨年MLBで採用された故意四球の申告制も採用に踏み切った。な
お、2016年の条文構成の大幅変更を機に検討を続けてきた、英文と日本の規則書の【原注】、【付記】、【規則説明】における表現の統一については、今回の改正をもって一応完結となった。

今後も規則委員会では世界標準を見据えて、原文にできるだけ忠実で、より分かりやすい規則書の作成に取り組んでいく所存である。多くの人が野球規則を正しく理解し、そして世界的に通用する野球が、我が国で広まっていくことを切に願っている。

この規則書は2018年2月15日から発効する。

2018年2月

日本野球規則委員会