2014年度 改正規則解説
~改正規則と規則適用上の解釈について~
麻生紘二 <日本野球規則委員会委員>

改正規則の解説 ~規則の改正は14カ所

日本野球規則委員会は、1月10日に開催され、規則の改正について検討し、そして1月27日に2014 年度の規則改正を以下のように発表しました。今年度の大きな改正は、野手のグラブにも色の制限が加えられたことおよび三塁への偽投が禁止になったことです。歴史的な改正が行われた年と言えます。

(1) 1.15 (a) の改正および [注] の追加
(2) 1.17 [注] ③に追加
(3) 2.40 [原注] に追加
(4) 2.44 (a) [原注] に追加
(5) 2. 44の末尾の削除
(6) 3.05 (d)に追加
(7) 4.12 (b) (4) の改正
(8) 6.05 (h) [原注] の改正
(9) 6.06 (c) [原注] および7.00補則 (B) (a) (4) の改正
(10) 7.09 (a) の改正および [原注] の追加
(11) 8.02 (a) (1) のペナルティの改正
(12) 8.05 (b) および同 [注] の改正
(13) 8.05 (c) [原注] の改正および同 [注]の削除
(14) 10.01 (a) の改正

規則書の表紙の色は何の色?
前述のとおり、今年から (米国は昨年から) 野手のグラブの色についても制限が設けられ、 あとで詳しく説明しますが世界の標準色基準 14 番より薄い色のグラブの使用は認められないことになりました。しかし、14 番の色と言っても、素人にはグラブを見ただけでは全く分かりません。そこで少しでもイメージしてもらえればということで黄色の14 番の色を、今年度の「公認野球規則」表紙に使ってみました。これより薄い色はダメということです。ご参考まで。
では、 以下プレイングルールの改正について解説いたします。

(1) 1.15 (a) の改正および [注] の追加
1. 15 冒頭の「投手のグラブ」を「投手を含む野手のグラブ」に改め、同 (a)を次のように改める。
1. 15 投手を含む野手のグラブの規格および構造は、1.14規定のとおりであるが、別に次の制限がある。

(a) 投手用のグラブは縫い目、しめひも、ウェブ網を含む全体が1色であることが必要で、しかもその色は、白色、灰色以外のものでなければならない。守備位置に関係なく、野手は PANTONE ®の色基準14番よりうすい色のグラブを使用することはできない。
[注] アマチュア野球では、所属する連盟、協会の規定に従う。

下線部が改正個所ですが、これまでは投手用のグラブにだけ色規制がありました。 それは投手のグラブの色が白色だと、打者にとってボールの白との区別がつきにくいからという理由でした。 今回、野手のグラブの色についても色規制が適用されたのは同様の趣旨です。例えば外野に飛んだ地面すれすれの打球を前進してきた外野手がダイビングキャッチを試みました。 ダイレクトキャッチ? ショートバウンド? 審判員としてどっちだったか一瞬判断に迷うときがあります。ましてや、グラブの色が白っぽい色だと、ボールの色とダブり、ますます判別が難しくなってしまいます。そのために色規制を設けたということです。グラブの色もメーカー側の競争で最近カラフルになってきました。そのあたりにも歯止めがかけられた格好です。
なお、ここでいう野手とは、投手、捕手も含まれます。また、色規制は、グラブ本体だけではなく、グラブ本体、パーツ (紐革、 ヘリ革、 玉ハミ) にも適用されますが、ハミ出し (切ハミ) についてはこの限りではありません。
ところで、PANTONEとは何でしょう? PANTONEとは、米国のカラー印刷用インクの会社で、そこの色見本帳が広く標準としていろんな業界で使用されているようです。 一つの色で11番~ 19番まであり、その14 番より薄い色は認められないということです (番号が小さくなると色は薄くなります)。といっても、素人には見ただけでは何番の色なのか、14 番より薄いのか濃いのか、全く分かりません。したがって、グラブメーカーを信用するしかありません。しかし、使っているうちに革が色褪せて白または灰色に近いなと審判員が判断したらそのグラブを審判員は取り替えさせることができます。
また、プロは今年から規則どおりの適用となりましたが、グラブ一つ買い換えるのも高額ですから底辺の広いアマにとっては大変なことです。この点を考慮して、アマ [注] を挿入して、 規則を適用するかどうかは各団体の判断に委ねるということにしました。社会人、大学は、今年は猶予期間として、規則の適用は2015年度からとなりました。全軟連はこの規則は適用しないと決めました。一方、高野連は、以前から投手、野手を問わずグラブの色については、「カラーグラブ、ミットは使用できない。ただし黒については使用しても構わない。」との用具の使用制限がありますので今回の改正規則は関係なく、現行どおりということです。

(2) 1.17 [注] ③に追加
③ 投手用グラブに…色でなければならない。ただし、日本野球規則委員会が特に認めた場合は、 この限りではない。

規則1.17の [注] ③は 「投手用グラブに商標およびマーク類を布片または刺繍によって表示する場合、その色は、文字の部分を含み、すべて白色または灰色以外の色でなければならない。」 と規定していますが、昨今外国メーカーが日本市場に進出しょうとしたとき、その会社が長い歴史の中で使っているロゴが、この日本 [注]に抵触するという事態に直面し、かといって一切排除あるいは日本の規則に合うようロゴを作り替えなさいというのも大人気ないと規則委員会では判断し、特に理由がある場合に限っては止むなしということで、ただし書きを挿入したものです。
特に理由がある場合とは、相当な期間そのロゴを使用していることおよび白の部分のウェイ トが小さいことが条件で、この特別承認のケースを拡大するつもりはまったくありません。

(3) 2.40 [原注] に追加
インフィールドフライが宣告されたときに妨害が発生した場合、打球がフェアかファウルか が確定するまでボールインプレイの状態は続く。打球がフェアになれば、野手の守備を妨害した走者と、打者がアウトになる。打球がファウルになれば、野手の守備を妨害した走者だけがアウトとなり、その打球が捕球されたとしても、打者は打ち直しとなる。
インフィールドフライが宣告されたときに妨害が発生、ありそうなプレイですが、これまで規定がなかったことが不思議なくらいです。
さて、ご存じのとおりインフィールドフライが宣告されてもボールインプレイです。 そして、 打球がフェアであることがインフィールドフライの条件です。インフィールドフライが宣告されかつフェアの打球を守備しようとしている野手を走者が妨害した場合、ボールデッドとなってその走者はアウトになり、また打者はインフィールドフライでアウトになります。野手がイ ンフィールドフライを捕球したかどうかは関係ありません。仮に野手が落球しても妨害でボールデッドになっているので他の走者の進塁は認められません。
では、インフィールドフライ・イフ・フェアと宣告された打球がファウルになった場合はどうなるのかという点です。規則では、「野手の守備を妨害した走者だけがアウトになり、その打球が捕球されたとしても、打者は打ち直しとなる。」と言っています。ファウルになればインフィールドフライは成立しないことはお分かりだと思います。ファウルの打球を守備しょうとしている野手を妨害したわけですから、妨害が発生した時にボールデッドとなって、野手がその打球を捕ったかどうかに関係なく、その走者はアウトになります。では打者はこの場合どうなるのか。通常走者が打球を処理しようとしている野手の守備を妨害した場合、走者アウトになって打者には一塁が与えられるわけですが、この場合はファウルですから打者を一塁に行かせることはできないので、ワンストライクが追加され、打者は打ち直しとなるということです。
アンパイアリングとしては、フェアかファウルがはっきりしている打球は妨害が発生したらすぐ 「タイム」で構いませんが、ライン上の 「インフィールドフライ・イフ・フェア」のケースでは、フェアかファウルが確定するまでは、小さく (妨害があったよと) ポイントしておくことが大事です。そして、フェアかファウルかで上述のように処理が違ってきます。
なお、参考までに、規則7.08 (f)もこの際再確認しておいてください。
『インフィールドフライが宣告された打球が、塁を離れている走者に触れたときは、打者、走者ともにアウトになる。
[例外] インフィールドフライと宣告された打球が、塁についている走者に触れた場合、その走者はアウトにならず、打者だけがアウトとなる。
[注5]インフィールドフライと宣告された打球が走者に触れた場合は、その走者が塁についていてもいなくても、ボールデッドとなる。

(4) 2.44 (a) [原注] の後段に追加
ただし、0アウトまたは1アウトのとき、本塁でのプレイで走者が得点した後、打者走者がスリーフットレーンの外を走って守備妨害でアウトが宣告されても、その走者はそのままセーフが認められて、得点は記録される。

いわゆるプレイが介在 (本塁でセーフまたはアウト)したケースですが、親切に明文化したものでこれまでの解釈と何ら変わるものではありません。

例えば走者三塁で投前にスクイズし、それを捕った投手が本塁にトスしたがセーフ、その後捕手が一塁に送球しようとしたところ打者走者がスリーフットレーンの外側を走っていて捕手の送球に当たり守備妨害が宣告されアウトになった。この場合、0アウトまたは1アウトであれば、三塁走者の得点はそのまま認められ、打者走者アウトで1アウトまたは2アウトから試合再開となる。しかし、2アウトであれば、打者走者が一塁へ触れる前のアウトが第3アウトになるので、三塁走者の得点は認められないことはもちろんです。

(5) 2. 44の末尾の削除
「妨害が起きた場合は、ボールデッドとなる。」を削除する。

妨害が起きた場合、通常即ボールデッドとなります。しかし、その例外もあります。
例えば、6.06 (c)のケース、打者がバッタースボックスの外に出て、盗塁した一塁走者をアウトにしようとした捕手の送球動作を妨害した場合、妨害と同時にボールデッドになるのではなく、盗塁した走者がアウトになれば、妨害はなかったものと考えられ、打者はアウトにはなりません。また、6.08 (c)のケース、捕手が打者を妨害した場合、妨害にもかかわらず打者が打って、それがヒットとなり、走者も1個の塁を進み、打者も一塁に達したならば、妨害とは関係なくプレイは続けられます。このように、妨害でも例外的処置があるため、誤解を避ける意味で、2.44の末尾の文章が削除されたもので、この削除は規則の改正を意味するものではなく、妨害が起きてもボールデッドにならないということではないことをご理解ください。
今年の規則改正である、「インフィールドフライと妨害」も、“インフィールドフライ・イフ・フェア” の場合は、フェア/ファウルが確定して初めてボールデッドになりますので、妨害即ボールデッドにならないケースと言えます。

(6) 3.05 (d)の末尾に追加
また、投手が塁上にいるとき、または投手の打席で前のイニングが終了して、投手がダッグアウトに戻らずにマウンドに向かった場合は、その投手は、準備投球のために投手板を踏まない限り、そのイニングの第1打者に投球する義務はない。

3. 05 (d)は、本書でも解説したとおり、試合の意図的な遅延行為を防止するために昨年追加になったものですが、ファウルラインを越えたら先頭打者への投球義務があるとすれば、では投手が塁上にいてチェンジになったとか、投手が打者でアウトになってチェンジになった場合、 投手はすでにダイヤモンドの中にいるから、そういう場合も先頭打者への投球義務はあるのかという疑問が湧き、その疑問に答えるために今年上記条文が追加されたということです。
条文では、このような場合は、投手が準備投球のために投手板を踏まない限り、先頭打者への投球義務はないと言っています。

(7) 4.12 (b) (4) の改正
解説なし

(8) 6.05 (h) [原注] の2段目の改正
バット全体がフェア地域またはファウル地域に飛んで…

下線部が追加されたもので、バット全体がフェア地域だけでなく、ファウル地域に飛んでプレイを企てている野手を妨害したときにも、故意であったか否かの区別なく、妨害が宣告されるということになり、規則の適用が明確になりました。

(9) 6.06 (c) [原注] の2段目の改正
打者が空振りし、スイングの余勢で、その所持するバットが、捕手または投球に当たり、審判員が故意ではないと判断した場合は、打者の妨害とはしないが、ボールデッドとして走者の進塁を許さない。(下線部を改正)

昨年までの条文は次のようになっていました。
「打者が空振りし、自然の打撃動作によるスイングの余勢か振り戻しのとき、その所持するバットが、捕手がまだ確捕しない投球に触れるか、または捕手に触れたために、捕手が確捕できなかったと審判員が判断した場合は、打者の妨害とはしないが、ボールデッドとして走者の進塁を許さない。」
今回、原文の改正に合わせてわが国の規則書の条文を注意深く読み直し、原文に則して分かりやすい表現にしたのが改正文です。
原文では、“…and swings so hard he carries the bat all the way around”
となっています。つまり、「激しく振りまわされたバット」が捕手に当たったときと言っているので、それを「スイングの余勢」と訳し、また「振り戻し」とは振ったバットをまた同じ軌道で戻すということですから、その行為は自然とは言い難く、それが捕手または投球に当たれば、むしろ妨害だろうと判断して、「振り戻し」の言葉は削除しました。
また、バットが触れたために捕手が確捕できなかったのかどうか、審判員としては大変難しい判断が求められることから、「当たったのが故意だったかどうか」で審判員が判断できるようにシンプルに改正になりました。したがって、確捕できたかどうかは問わないということになります。スイングの余勢でバットが捕手に当たり、結果捕手が投球を確捕できなくても、故意でなければ妨害にならないし、逆にバットが捕手に当たったが、しかし捕手が投球を確捕できたとしても故意と審判員が判断すれば打者の妨害となります。
なお、7.00補則(B)(a)(4)も同様に改正となります。

(10) 7.09 (a) を改正し、 [原注]を追加
(a)第3ストライクの後、打者走者が投球を処理しようとしている捕手を明らかに妨げた場合。
打者走者はアウトになり、ボールデッドとなって、他の走者は投球当時占有していた塁に戻る。
[原注]投球が、捕手または審判員に触れて進路が変わり、その後に打者走者に触れた場合は、打者走者が投球を処理しようとしている捕手を明らかに妨げたと審判員が判断しない限り、妨害とはみなされない。

7.09(a)の改正に伴い、同[注]の①②③の文中も、「明らかに妨害した」と変わり、また7.00補則(A)(g)にも「明らかに」が追加された。つまり、「明らかに」ということですから、だれが見ても捕手の守備の妨げになったと判断される場合に、打者走者は妨害でアウトになるということです。ということは、打者走者に故意性がかなり認められる場合とか、あるいは打者走者が投球または投球を処理しようとしている捕手を邪魔しないよう避ける時間があった(あるいは避けられた)と判断される場合が、「明らかに」に相当すると考えられます。あくまで審判員の判断ですが、“出会い頭的”あるいは偶然の場合は明らかな妨害とは言えません。

(11) 8.02 (a) (1) のペナルティの改正
ペナルティ 投手が本項に違反した場合には、球審はただちにボールを交換させ、投手に警告を発する。投手がさらに違反した場合には、ボールを宣告する。…
(下線部が改正)

アマチュア野球では、アマ内規⑪により、「規則8.02(a)(1)のペナルティに代えて、審判員はその都度警告してボールを交換させる。」となっています。

(12) 8.05 (b) および同 [注] の改正
(b)投手板に触れている投手が、一塁または三塁に送球するまねだけして、実際に送球しなかった場合。
[注]投手が投手板に触れているとき、走者のいる二塁へは、その塁の方向に直接ステップすれば偽投してもよいが、一塁または三塁と打者への偽投は許されない。…(下線部を改正)

三塁への偽投の禁止、それはまさに画期的な改正と言えます。歴史を紐解くと、塁への偽投はある時代はすべて許され、またある時代はすべてダメとなり、そして1900年に二塁と三塁だけはオーケーとなったようです。
それがまた三塁が禁止となったのは、外国はほとんどけん制をしない、けん制は試合の遅延につながる、そして一・三塁のケースでのけん制はボークではないかと疑わしい動作が多々見られる、といった背景があって、禁止に踏み切ったと聞いています。
三塁への執拗なけん制、また一・三塁での三塁への偽投、これらは確かにほとんど無駄なプレイとみられ、試合の遅延につながっていることは間違いがありません。
ある意味では審判員の立場からすれば禁止になってすっきりしたと言えます。
もちろん、投手板に触れている投手が三塁に送球することは問題ないし、また投手板をはずせば送球してもしなくても問題ないことは言うまでもありません。したがって、三塁へけん制するのだったら必ず送球しなさい、あるいは三塁へけん制するときは投手板を必ずはずしなさいと指導を徹底することです。

(13) 8.05 (c) [原注] の改正および同 [注]の削除
[原注] … ボークである。投手は、塁に送球する前に塁の方向へ直接踏み出さなければならず、踏み出したら送球しなければならない。 (二塁については例外)
走者一・三塁のとき、投手が走者を三塁に戻すために三塁へ踏み出したが実際に送球しなかったら (軸足は投手板に触れたまま)、ボークとなる。

偽投は二塁だけしか認められなくなりました。一塁と三塁へは、投手は、投手板に触れたまま、塁に踏み出したら必ず送球しなければならないと非常に単純かつ明快になったと言えます。
かつて、 三塁へのけん制を巡っては、
・自由な足をゆっくり上げて走者の動きをけん制したり、
・ノーワインドアップで投球動作と同じ動きで自由な足を回したり、また一・三塁では、
・三塁へ踏み出したが腕の振りがなかったり、
・三塁へ踏み出し、腕を振ったが、軸足がふたたび投手板の上に落ちたり、
・投げ手にボールを持たずに三塁へ偽投し、振り向きざま一塁へ送球するとか
など、偽投の仕方が投手によってバラバラで分かりづらく、その都度規則委員会では規則適用上どう解釈するかを検討してきました。今回の三塁への偽投禁止でこうした紛らわしいプレイはなくなり、大変スッキリしました。と同時に、無駄なけん制をなくすという点でスピードアップにもつながり、かつ投手は打者と勝負という本来のベースボールを呼び起こしたという 点で評価できます。しかし、長年一・三塁のケースでは、投手が三塁にまず偽投してそれから一塁へ振り向いて送球するといったプレイに慣れ親しんできたことから、選手たちにはシーズン当初は混乱が生じるだろうと思われますが、指導者、審判員がシーズン前にさまざまな機会を捉えて、この規則の改正について繰り返し指導・徹底を図ってほしいとお願いする次第です。
なお、これまでの [注]では「投手が三塁へ踏み出して腕を振って送球する動作 (偽投)をした勢いで軸足が投手板からはずれた (場所の如何を問わない)場合には、そのまま振り向いて 一塁へ送球することは許される。」となっていましたが、“偽投”をした勢いで投手板をはずれても今回の改正でそれも違反となり、長年アマチュアでは、「偽投」とは、あるいは「場所の如何を問わない」とはの議論が繰り返されてきましたが、それにも終止符が打たれたと言えます。

規則適用上の解釈
昨年寄せられた質問の中から参考になる事例を紹介します。

事例1: 同点で最終回の裏、2アウト走者三塁、打者は3ストライク目の投球を空振り、捕手はそ の球を捕り損ね、大きく横にそらし、ボールはボールデッドの個所に入ってしまった。三塁走者はホームイン。打者は歓喜の余り 三塁走者と抱き合って一塁へ進もうとはしなかった。
アピールもなく両チームはホームベースを挟んで整列してしまった。この場合の正しい処置は?

このケースは本塁に整列してしまったのでアピール権は消滅してしまっているが、整列前な ら、アマ内規④を準用するのが適切と考えます。つまり打者走者をアウトにするにはアピールが必要です。また、決勝点に相当する場合は、ボールデッド中でも、アマ内規⑨により、守備側は本塁整列前に球審にボールを要求してアピールすることが可能です。
なお、審判員は通常、ボールデッドになれば、打者走者を含む走者に対して1個の塁を進みなさいと指示するので、打者走者がそのまま本塁に留まるということはないかもしれません。また、はっきりそういう指示をしたほうがこの事例のような問題は防止できると言えます。

事例2:2アウト同点の9回裏、走者一・三塁。打者三塁ゴロ。三塁手が捕って一塁へ送球、しかしそれが悪送球となってスタンドに入ってしまった。三塁走者ホームインでサヨナラゲーム。 ところが一塁走者は勝ったと思って二塁に行かず本塁整列に向かってきた。そのまま試合終了。 果たしてこれで良かったのか?

このケースも本塁整列で試合は終了したわけであるが、規則上はどうだったのだろうか。一塁走者はフォースの状態にあることから守備側からアピールがあればアウトになります。したがって、守備側がアピールをしていれば一塁走者はフォースアウト(スリーアウト) となって、 三塁走者の得点は認められず、同点で延長回に入るということになります。なお、この場合も、 ボールデッド中ですが、決勝点のケースに当たりますので、前問同様、アマ内規⑨により、守備側は球審からボールをもらって本塁整列前にアピールをすることができます。
*
以上で2014年度の規則改正および規則適用上の解釈の解説を終わりますが、今年度は画期的と もいえる大きな改正がありました。引き続き正しい野球の発展に向けて関係者の皆様のご尽力、 ご理解を賜りますようよろしくお願い申し上げます。
なお、審判制度改革の一環である、アマチュア公認審判員の登録が今年の6月には実施されます。それによって初めてわが国アマチュア4団体の審判員の実数が把握されることになります (参考:これまでの日本アマチュア野球規則委員会は昨年4月に全日本野球協会に統合され、一専門委員会としてアマチュア野球規則委員会と改称し活動をしています)。
また、2012年11月に発刊しました「野球規則を正しく理解するための野球審判員マニュアル」 は好評にお応えし、最新の規則改正を反映させ、また規則の歴史も織り込みながら中身をさらに充実させ、第2版をこの5月に発行する予定です。野球規則の理解に一助にしていただければ幸甚です。