2011年度 改正規則解説
~改正規則と規則適用上の解釈について~
麻生紘二<日本野球規則委員会委員>

■改正規則の解説~規則の改正は17か所

日本難求規則委員会は、 去る1月28日、 今年度の規則改正を発表 しました。 今年度 もすでに改正済みの原文のOfficial Baseball Rules の改正を1年遅れでわが国の規則書に反映することになりま した。

今年度は以下の通り、 17カ所の改正となりました。 一見、 大改正のように見えますが、 そのほとんどが表現の修正、 あいまいな表現の明確化、実務の明文化、 条文の再整理等です。
(1) 1.04、 3.01 (b) の改正
(2) 野球競技場区画線 (1) の改正
(3) 1.06の改正
(4) 1.10 (a) (b) の改正、 同 (c)[原注] の追加
(5) 1.16の改正
(6) 244 (c) の改正および [原注]の追加
(7) 3.10 (a) および同 [例外] の改正
(8) 4.01 (a) (b) の改正および同(c) の追加
(9) 509 (b) の改正および [原注]の追加
(10) 5.10 (f)、 6.05 (a) [原注]、7.04 (c) の [注] を削除
(11) 6.05 (g) の追加
(12) 6.05 (h) の追加
(13) 6.06 (d) [注] の追加
(14) 6.10の改正
(15) 7.05(j)を削除し、 7.04 (e)の追加
(16) 8.02 (a) (1) の追加
(17) 9.02の改正
では、上記のうち、主な改正について、あるいは重要と思われる改正について解説をしていき ます。

■1.10 (a) (b)の改正
(a) バットは滑らかな円い棒であり、 太さはその最も太い部分の直径が2.61インチ (6,6㌢) 以下、長さは42イ ンチ(106.7㌢) 以下であることが必要である。 バッ トは一本の木材 で作られるべきである。

(b) カップバット (先端をえぐったバッ ト) バッ トの先端をえぐるときには、深さ1インチ (2.5㌢) 以内、 直径1インチ以上2インチ (5.1㌢) 以内で、 しかもそのくぼみの断面は椀状にカーブしていなければならない。 なお、 この際、 直角にえぐったり、 異物を付着させてはならない。

最近、 木製バットの破損が目立ちます。 特に、 その折れ方がぽっきり、あるいは裂けるといった状態から、木片が飛び散るケースが増え、 非常に危険視されるよう になりま した。その原因と して、 材質やバッ トの乾燥の仕方の変化などが考えられ、MLBでも全バッ トの材質、 木目、太さの調査や折れたバッ トの検証などを行い、 その結果従来の2.34インチ (7.0㌢) から2.61インチ (6.6㌢)以内へと細くなりました。 一方では、MLBの内部規則で、 木目が見えること、 握りの部分は0.86イ ンチ (2.18㌢) より細く してはいけないこと、折れやすい材質の禁止 (例えばメープルの一部) など細部にわたっ てバットヘの規制がかけられています。

この改正を受けて、 わが国はどうするかを検討しま した。 まずはバットメーカーに対してバッ トの実態がどうなっているかア ンケー ト調査を行いました。 それで分かったことは、ほぼすべて、 6.6㌢以下のバットが使われている ということでした。

従って、 改正しても影響はないと判断して、 わが国の規則書にも反映させることとしたものです。 ただ、今年1年間 は猶予期間と して新旧の規格 いずれも公式試合での使用 を認めることにしま した (プロ野球も同様の処置)。 なお、 金属バットヘの影響はありません。

■1.16の改正
すでにわが国では、ベースコーチャーも含め、万が一の事故に備えてヘルメットの着用が義務付けられていますが、 規則書にもプレーヤーをはじめ、 試合に携わっている者すべてがヘルメットを着用するよう今回明記されました。

■2.44(c)、5.09(b)の改正
審判員の妨害の項ですが、 これまでの規則適用上の解釈を明文化 して、捕手の送球動作には、盗塁を阻止 しょうとする捕手の送球動作、 塁上の走者をアウ トにしよう とする捕手の送球動作及び投手への返球が含まれ、捕手が送球しょうと手が球審に当たって送球ができなかったり、 ボールを落としたりするなど して、審判員が妨害したら、 ボールデッ ドにして走者を元の塁に戻す処置を取ります。

■5.10(f)、6.05(a)【原注】、7.04(c)の【注】削除
今年の最大の改正です。2007年にダッグアウト内での捕球は危ないので禁止になったとき、わが国では、この際ボールデッドの箇所の取り扱いはすべて同じにしようではないか、その方が分かりやすいのではないかと考え、日本[注] をつけて、原文とは異なる解釈をしてきました。

つまり、野手が捕球後にダッグアウトに踏み込んだ場合、 原文ではダッグアウトの中で野手が倒れ込まない限りインプレイで、そこから送球することも可能でした。 しかし、わが国では、倒れ込まなくても、ダッグアウトに踏み込んだだけで即ボールデッドにして、 走者に1個の塁を与えてきま した。

ところが、わが国のグラウンドの実態を見ると、そのほとんどがベンチ方式で、ラインを引いてここから先はボールデッ ドの箇所を表示して対応していました。その現場からは、そんなグラウンドで一歩踏み込んだだけで即ボールデッドにするより、プレイが続けられるのなら試合を止めずに続けさせた方がよいではないか、との声が強く上がり、今回思い切って原文と合わせることにしました。かといって、プレーヤーの安全を軽視 したわけでは決してなく、区々ある球場、 球場でプレーヤーの安全には最大の注意を払ってほしいと思います。

ここで、 関連するプレイを整理しておきますので参考に してください。

ダッグアウト内での捕球 ×認めない
スタンド内での捕球 ×認めない
捕球後、ダッグアウト内に踏み込んだ後 ×倒れ込めばデッド (走者は1個) ○倒れ込まなければインプレイ
捕球後、スタンド内に踏み込んだ後 ×倒れ込めばデッド (走者は1個) ×倒れ込まなくてもデッド(走者は 1個)

注:ダッグアウトに隣接したカメラマン席は通常スタンド扱いですが、球場によって取り扱いが異なる場合がありますので、 球場の特別ルールに注意してください。

■6.05 (g) (h) に追加
(g〉 ただし、打者がバッタースボックス内にいて、打球の進路を妨害しようとする意図がなかったと審判員が判断すれば、打者に当たった打球はファウルボールとなる。
(h) 打者がバッタースボックス内にいて、打球の進路を妨害する意図がなかったと審判員が判断すれば、打者の所持するバットに再び当たった打球はファウルボールとなる。

打者がバッタースボックス内にまだいるときに、打球に当たった場合はファウルボール、打者の所持するバットに打球が再び当たった場合もファウルボールとなります。

では、 「バッタースボックス内にいるとき」 とはどういう状態を言うのでしょうか。打者の両足がバッタースボックス内にあって打球に当たったときはファウルボール、打者の両足がバッタースボックスの外にあって打球に当たったときは打者アウトで疑いの余地はありませんが、次の場合はどうでしょう?

(イ) 右打者がバントして一塁へ走り出そうとして、片方の足はボックス内についていたが、もう一方の足はボックス外の上方空間にあったときに、打球に当たった
(ロ) 右打者がバントして一塁へ走り出そうと して、片方の足はボックス外についた状態で、もう片方はボックス内の上方空間にあった

バッタースボックス内に残っていたかどうかは、そのときの打者の動きによって判断する必要があり、まさに審判員の判断によるわけですが、「片方の足がバッタースボックス内に残っている状態で打球に当たればファウルボール」 「片方の足がバッタースボックスの外に出て当たれば、打者はアウ ト」 との解釈をとります。

従って、上記の (イ)のケースはファウルボール、 (ロ)のケースはボックスの外に出て当たったとみなされ、打者はアウトが宣告されます。

ただし、上記の説明は、机上での話というか、コマをストップさせた状態での話であって、実際は打者の動作は流れており、 打者がバッタースボックスに残っていたか、それとも出ていたかは、一に球審の判断によるのだということを誤解のないように強調しておきます。

■6.10の改正
指名打者の項ですが、箇条書きに再整理されて非常に見やすくなりました。そして、新たに、指名打者の特定を忘れた場合の処置について追加がなされています。

■8.02(a)(1)に追加
ただし、 投手板を囲む18フィートの円い場所の中にあっても、投手板に触れる前に投球する手をきれいに拭けば、この限りでない。

メジヤ一の試合を見ていると、投手が投げ手の指を口に持っていくしぐさをよく目にしますが、従来は18フィートの外であれば大目に見て許されていました。

こういう投手が多く、審判員にとっても18フィー トの中か外かいちいちチェ ックするのが大変ということでしょうか、中でもいいよ、ただし投手板を踏む前に、その手または指をきれいにふき取りなさいよということになりま した。

これに違反したら、アマチュアの場合は、その都度警告し、ボールを交換 させます。くり返せばその投手の退場もあり得ます。

■9.02の改正
① (a) 審判員の判断に基づく裁定は最終のものであるから、プレーヤー、監督、コーチ、または控えのプレーヤーが、その裁定に対して、異議を唱えることは許されない。
② (c) 審判員が協議して先に下した裁定を変更する場合、審判員は、走者をどこまで進めるかを含め、すべての処置をする権限を有する。この審判員の裁定に、プレーヤー、監督またはコーチは異議を唱えることはできない。異議を唱えれば、試合から除かれる。を追加

審判員の裁定は最終のものであって、異議を唱えることはできないということを強調するために、ここでは太字にしました。 審判員の裁定に文句を言ったり、すぐにダッ グアウトを飛び出してきて罵声を浴びせたり、挙げ句には暴力を振るったりする光景を、残念ながら時折目にします。これは、特にジャッジメント・コールに対しては、規則からいっても、審判員へ敬意を払うという点からしても、決して許されることではありません。

監督の態度、発言を見て、選手たちは育っていきます。 監督の審判員に対する批判的・侮辱的な態度、発言を見て、 それが選手たちにも当たり前の行動となって、自分たちも大きく なって同じことを繰り返します。

特に、少年野球の指導者にとっては、審判員および相手チームに対するリスペクト (敬意) の念を教えることが、何にもま して重要なことだと考えます。
残念ながら、わが国においてはこの点が欠けています。

■規則適用上の解釈
改正規則の解説はこれで終わりますが、次に昨年規則委員会で議論されたことや質問が寄せられた中から、2つだけ取り上げて規則適用上の解釈を記しておきます。

1、 6.06(c)【原注】後段について
「打者が空振りし、自然の打撃動作によるスイングの余勢か振り戻しのとき、その所持するバットが、捕手がまだ確捕しない投球に触れるか、または捕手に触れたために、捕手が確捕できなかったと審判員が判断した場合は、打者の妨害とはしないが、ボールデッ ドとして走者の進塁を許さない……」 と規定されています。

まずはっきりしておきたいのは、ただ単に捕手に触れただけでは、あるいは何が何でも捕手に触れればすべてボールデッドとなるのではないということです。また、捕手に触れることは触れたが、捕手が構わず普通に送球したような場合は、妨害行為はなかったように進み、インプレイとするということ です。もちろん、ボールデッドにするかどうかは審判員の判断によります。

具体的事例を整理すると以下の表のようになりますので、参照していただきたいと思います。

事例 処置
事例1 捕手またはミッ トに触れることは触れたが、その後のプレイに問題ないようなケース そのままプレイを続ける。何でも触れたからといってボールデッドにするものではない。
事例2 捕手またはミットに触れたが、捕手は構わずプレイをして、例えば塁上の走者をアウトにしたケース そのプレイは生きる。他の走者の進塁も認められる。
事例3 捕手またはミットに触れ、捕手のその後のプレイに邪魔になったり、支障をきたしたケース 打者の妨害とはしないが、ボールデッ ドにして走者を戻す。
事例4 捕手またはミットに触れ、まったく捕手が次のプレイができなかったとき 同上
事例5 打者が故意に捕手またはミットに触れさせたケース 打者の妨害。打者アウトで、走者は戻る。妨害行為があっても、走者をアウトにできれば、妨害はなかったものとしてそのアウトを認め、妨害と関係なくプレイは続けられる。
事例6 第三ストライクに当たるときは、それによって確捕できなかった場合は、打者にはアウトが宣告される。

 

2、イリーガルピッチへの対応
投手がイリーガルピッチをしたとき、例えば自由な足を途中で止めたりしたとき、その時点で即ボールデッドにするのか、あるいは投球が完了した時点で、イリーガルピッチのペナルティー (ボールの宣告) を適用するのか、どちらが適切な判断となるのでしょうか。

正しい処置は以下の通りです。
イリーガルピッチでも、打者は打とうと思えば打てるわけですから、球審は“イリーガルピッチ!” と発声するのみで、投球が完了した (捕手が捕球した) 時点、あるいは打者が飛球を捕られたりして一塁へ進めないことが確定した時点で、イリーガルピッチのペナルティーを適用します。

球審は、投手に対し、上げたひざをたたいてイリーガルピッチであったことを知らせ、公式記録員に向かって左手を上げて “ワン・ボール!”をコールし、ボールカウントを明示します。

では、投手が投げなかったときはどうなるでしょうか。例えば、投手が、自由な足を止めて、“イリーガルピッチ!” と宣告され、その時点で投球を止めてしまつたような場合は、投手が投げなければ “イリーガルピッチ”にはならず、投手には投球を最初からやり直させる (投球はないから当然ボールのカウントはありません) ことになります。

最後に、昨年まで取り組んできた捕手に対する 「キャッチャーミットを動かすな」 「キャッチャースボックスから出るな」 キャンペーンヘの継続的取り組みをよろしくお願いします。
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以上で2011年度の規則改正及び規則適用上の解釈の解説を終わります。試合を行う際は引き続きマナーアップ、 スピードアップに留意して、正しい野球の推進に向けてご尽力いただくよう関係者の皆様にお願い申し上げます。